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セカンドオピニオンのすすめ

治療にまよったときどうするか・・・

「乳がん 私らしく生きる」 編:財団法人パブリックヘルスリサーチセンター 発行:ライフサイエンス社

「乳がん 私らしく生きる」
編:財団法人パブリックヘルスリサーチセンター
発行:ライフサイエンス社

はじめに

乳がんの告知後、手術と術後の薬による全身治療(補助療法)また数年後再発とその治療・・など、乳がんの患者さんが治療をお受けになるタイミングは、実は何回か訪れることがあります。

「この手術をします」とか「この薬を使いましょう」主治医との間に良好な信頼関係があり、かつあなたがそれを納得すれば、そのような主治医からの一方的な提案でも、治療法はたやすく決定されることでしょう。しかしすべての患者さんと主治医との間で、このようなあうんの呼吸のうちに、必要な情報が伝達されすべての理解と同意がなされるとは限りません。現代の医療の大原則は、「インフォームドコンセント」つまり十分な説明にもとずき、患者さんが納得して治療法を選ぶことが何よりも大切とされています。

さらに、病状によっては主治医から提案される治療法はひとつとは限らず、複数の治療法を提案されることもよくあります。「この薬とあの薬、さらにこういう組み合わせ方もあります。副作用はそれぞれ脱毛と気持ち悪くなったり吐いたりします。副作用は予測可能なのであらかじめ十分な対処をして望みますが、時に予期されぬ事態が起こることもあります。この何種類かの治療法があなたに望ましいと思われますが、さてどの治療を受けますか」と言われれば・・・患者さんはそれから「悩む」事が始まります。場合によっては主治医から十分な情報を得られず、情報不足のまま悩む患者さんもおられます。

あるアンケート調査によれば治療の選択に迷ったり悩んだりしたことのある乳がん患者さんは全体の70%近くにもなります。提案された治療の効果はあるのかどうか、その効果の程度や副作用がはっきりしないからとか、提案された治療が自分にとって本当に正しい方法かどうかを知りたいという患者さんはとても多いのです。

このように治療に悩んだり迷ったりしたら、患者さんはどのように解決をすればよいのでしょうか。まず何よりも大切なことは正確な情報収集です。

有用な情報源としてはまず、医師、つまり主治医(担当医)があげられるでしょうが、これについては後ほどまた詳しくご説明いたしますので、もう少し別の話を進めましょう。

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インターネットの活用

医師以外に乳がん治療に関する情報源になりうるものは、活字媒体です。現在は、本や患者さん向けの雑誌なども多く、活字の情報源はかなり充実しています。また最近ではインターネットのホームページからも多くの治療に関する情報が得られます。代表的なサイトをお教えしましょう。

国立がんセンターのホームページ
患者さんや一般向けのがん情報ページです。とてもよく書かれていて勉強になります。

キャンサーネットジャパン
米国国立衛生研究所の一般向けサイトの和訳を中心として、がんに関する診断から治療、精神的ケアまで、すべてにわたるがん情報サイトです。

乳がん情報ネット
一般の方から患者さんまで、多くの女性の不安や疑問にお応えするために、乳がんの専門医達によって書かれた情報サイトです。

その他患者さん達が提供するサイトにも治療法選択に関する情報は満載です。

またこれらのページからは多くの乳がん情報サイトへリンクを貼ってありますので、そちらからも検索は可能です。

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患者さん・患者会

さて、このようなメデイアを利用した情報源の次に、治療に迷った患者さん達のお手伝いができる情報源は何でしょうか。それは患者さんご自身、つまり仲間の患者さん達です。例えば手術をお受けになったばかりの患者さんは、おそらくわずか1ヶ月でも先に手術を受けた先輩患者さん達から聞かされる体験談は、とても参考になるはずです。外来の待合室で長時間お待ちになっている患者さん同士が、とても有意義な情報のやりとりをしていることにお気づきになるでしょう。

「私はリンパ節転移が多くて、先生からは抗がん剤の治療を強く勧められたの。でも抗がん剤で免疫力が低下することをとても心配して受ける前は不安だったけれど、半年間の抗がん剤治療中に熱がでたり体がだるくなったりすることも一度もなくて、全然どうもなかったわ。当時むやみに心配して損しちゃった。」
などという会話は、待合室のどこかしらで必ず聞かれます。医師や看護士など医療従事者の言葉とは異なり、体験者からの発言は、やはり説得力のある情報になります。

乳がんの患者さんが、常に外来の待合室や自分の身の回りにいるとは限りませんので、そういう方達のためには全国の患者さんの会や、それらの都道府県支部会などがお役に立てるでしょう。代表的な乳がん患者さんの会をご紹介します。

全国乳がん患者の会一覧

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主治医とのコミュニケーション

さて、このようにご自分で勉強して得た知識やほかの患者さんの体験談などが、治療法選択のため役立つことはおわかりいただけたと思いますが、やはり患者さんにとって最も頼りになるのは医師からの情報です。その中でも特にご自分の主治医、担当医は、最も好ましい情報源にちがいありません。

しかし患者さんからは、「主治医はいつも忙しそうなので聞きたくても聞けない」「こちらから聞くとすぐ怒るので怖くて聞けない」など、主治医との相談に関しては残念な印象しかお持ちでない方も多いのです。主治医とのよりよい信頼関係を作ることがインフォームドコンセントの大前提ですが、忙しい(忙しそうにしている?)主治医と相談をしたいときにはどのようなこつがあるのでしょう?

  1. 1.
    主治医に聞きたい事はメモに書いておくこと
  2. 2.
    一度にいくつも質問しないで「今日はひとつだけ教えてください」など、小出しに尋ねること
  3. 3.
    外来で忙しそうなときには質問しない
  4. 4.
    次回の診察の時にお聞きしたいなど、あらかじめ質問があることを伝えておく
  5. 5.
    外来診察時間に相談時間を取ってもらえないときには別の日に相談のための時間を作ってもらう
  6. 6.
    それでも相談に応じてくれないときには、主治医とその上司(科長や病院長)に同じ内容で、治療選択に迷っているため相談したいので時間を作って欲しいという内容の文章を送ること、その際自分の主治医に全幅の信頼をおいて引き続き治療をお願いしたいことを必ず添えるようにする。

などが主治医と相談をするときのこつなのです。主治医との上手なお付き合いが、満足できる治療をお受けになることにつながります。

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セカンドオピニオンのすすめ

さてそのように、主治医を心から信頼し、主治医もよく説明もしてくれる、しかし、どうも治療法に不安があり、提案されたいくつかの選択肢の中から、いったいどれを受ければいいのかを決めかねているときには、あなたはどのように解決すればよいでしょうか?そうです、「セカンドオピニオン」という主治医以外の医師から意見を聞く方法が残されています。

まず勘違いなさらないようにこれだけは言っておきます。セカンドオピニオンは決して今の主治医を見限って、病院や治療施設をかえるための手段ではありません。ましてや主治医の悪口を言ったり、より相性のよい主治医に鞍替えするための突破口でもありません。現在お受けになっている治療や、主治医の提案してくれた治療の選択肢を元に、主治医以外の医師に意見を求め、現在の治療や今後の治療を、安心してかつ確実にお受けになるための情報提供をうけることです。

じつは現在お受けになっている治療や主治医から提案された今後の治療は、ほとんどの場合、セカンドオピニオンのドクターの意見とさほど食い違うことはありません。少し考え方を変えたり、検査を追加したりして、ほんの少々の軌道修正をするだけで、標準的な確実な治療法になることが大部分です。したがって、情報不足からの不安や治療上の疑問点は、ほんの少し患者さんの背中を押してあげるだけで見事に解決され、患者さんは自信を持ってイキイキと治療を受けられるのです。患者さんは客観的かつ正確にご自分の病状を把握し、ご自分の希望を十分に考慮して、科学的な治療根拠のもとに、信頼のおける医療従事者に背中を押してもらうことで、安心して治療が受けられるのです。セカンドオピニオンを求めることはそのひとつの有益な手段です。

セカンドオピニオン、がん医療相談窓口のリスト

さて、そのようなセカンドオピニオンは、どこでどのようにすれば受けられるのか、全国のリストをご覧下さい。医療相談の窓口の形でご相談を受けてくれるところも一緒に掲載します。(表:がん医療相談・セカンドオピニオンを受けられる 全国施設リスト)

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セカンドオピニオンを上手に受けるこつ

またセカンドオピニオンを上手に受けるためのこつは

  1. 1.
    主治医から治療経過などを書いた紹介状や写真などの資料をもらう
  2. 2.
    予約の必要や、費用、時間などを確認する
  3. 3.
    相談したい内容は要点をまとめてメモ書きしていく
  4. 4.
    相談を受けるセカンドドクターのところで引き続き治療を受けることを希望しない

などです。
少し詳しく説明しておきましょう。

  1. 1.
    主治医からの資料提供は、多くの施設でセカンドオピニオン外来受診の必須条件にしています。現在の病状や治療方針を客観的に把握するためには必要な情報ですが、実はこの「資料提供」を受けることが、現在の日本でセカンドオピニオンの普及を妨げている一番の問題点なのです。主治医にセカンドオピニオンの資料が欲しいと申し出たとたんに、自分の治療方針が気に入らないのかと・・不愉快になる主治医が実は圧倒的に多いからです。そのときにも、必ず「先生に全幅の信頼をおいており、引き続き見ていただきたいが、自分がより安心して先生の治療を受けたいので、その確認のために他の先生の意見も参考にしたいから」と言ってみてください。先にも申しましたが、セカンドオピニオンは現在の主治医を見限って別のドクターを捜す事ではありません。必ず主治医の所に戻って、確実な治療を受けるための安心情報を収集する手段であることを、主治医の先生にも分かってもらう必要がありますね。
    それでも理解してもらえない主治医であれば、紹介状や資料をそろえてもらうことは特に必要ないでしょう。乳がん専門医であれば、患者さんと少し話をすれば、現在の病状と治療がどのようであるかを十分聞き出せますし、また患者さんの理解の程度も確認できます。患者さんご自身の治療に対する理解力こそが紹介状であり病状報告書なのです。さあ、どうぞ資料なしでもかまいません、セカンドオピニオン外来の扉を叩いてみてください。
  2. 2.
    相談時間は最低でも30分、長いときには1時間を超えますので、ほとんどの施設では通常の外来とは別の枠組みでセカンドオピニオン外来を開設しています。また、残念ながらまだ保険診療の中にセカンドオピニオンの項目はないので、初診扱いの診療行為として代金を設定する施設もあれば、自由診療のひとつとして保険外で受ける施設もあり、そのスタイルはまちまちです。また、ほとんどの施設で相談は乳がん専門医が受けますので、やはり時間予約が必要です。施設によって予約の取り方も異なりますので、料金設定や相談時間を含めて必ずあらかじめお問い合わせください。
  3. 3.
    もちろんセカンドオピニオンのドクターとの相談時間にも限りはあります。要領よく無駄なくお聞きになれるようにあらかじめメモなどに相談事項をまとめておかれれる方がよいでしょう。
  4. 4.
    セカンドオピニオンのドクター達は多くの場合、あなたの主治医より乳がん診療の経験も知識も豊富でしょう。だからといって主治医の所では満足な治療をお受けになれないとお考えになるのは間違いです。治療方針はほんの少しの軌道修正でより確実で標準的なものになることがほとんどです。主治医にはもし必要であれば、その軌道修正の方法を文章でお返事することができるのです。また、セカンドオピニオン外来の施設でそのまま治療を受けたいと考えている患者さんからの相談は、相談にお応えする医師の判断に微妙に影響を与えるかも知れません。正確で客観的な治療判断のためにはやはりセカンドオピニオンの医師は第三者的立場に立つべきです。

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代替医療に関する相談

この項の最後に、よく患者さんがご相談に来られる内容ですが、代替医療(健康食品などを含む)や統合医療に関する悩みにすこしふれておきましょう。

代替医療はその定義からして、西洋医学とは相反するいくつかの面を含んでいます。西洋医学は常に分析的科学的であり、病気そのものの原因を明らかにする事が重要ですが、西洋医学には患者さんを全人的に診療するという面がやや劣っています。

それに対して多くの代替医療はまず初めに、患者さんの個性を認め、それぞれの症状にあわせて全人的に治療を施行していく点で優れています。しかしその反面、代替医療がどのような対象患者さんにいかなる手法を使えばいかような効果があるのかといった、科学的データを集積することはきわめてむつかしいのです。

多くの患者さんから代替医療への希望があっても医師として積極的に代替医療を勧められないのは、科学的根拠がそろっていない事が一番の原因なのです。今ここにEBM(エビデンスベーストメデイスン)として、どの程度、代替医療が科学的に有効であるか調べてみましょう。

最も有用な医学文献検索データベースMed Lineによって代替医療に関連する文献を検索すると、日本におけるがんに対する代替医療のEBMに関する文献はひとつも見あたりません。さらに、世界的なEBMのデータベースであるコクランライブラリーから、臨床試験に関するデータベースを解析すると、やはり、がんに関する代替医療の臨床試験はひとつもありません。また日本でがんの治療によく使われる漢方薬も有効性を確実にEBMで判定することはまだ行われていません。またある公衆衛生の調査によると、さまざまな健康食品に関する論文の大半は培養細胞,動物実験レベルの研究であり,人で効果を示す適切な論文は1つもなかったそうです。

代替医療はこのように、がんの予防や治療に関して、科学的に効果を証明されるものが、残念ながら今のところ何一つありません。代替医療は、補完医療、統合医療などと証されるように、あくまでも科学的根拠のある既存の治療法と並行して、副次的に行われるべき、患者さんのメンタルサポートのひとつと理解することが妥当でしょう。副作用の強い抗がん剤を悪者にしたてあげ、代わりにがんの治療が可能であるかのような安易な宣伝文句のために、患者さん達が代替医療や健康食品に傾倒してしまい、大切な治療チャンスを失うことだけは避けなくてはなりません。

さて、このようにして確実な情報提供を得た患者さんは、かならず、より安全で効果的な乳がん標準治療をお受けになれることでしょう。治療法に悩んだり病状に不安を感じたりせずに、多くの患者さんが信頼できる主治医の元で治療をお受けになれることを望みます。