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乳がん用語集

あ行

アロマターゼ阻害薬

乳がん細胞は、エストロゲンという女性ホルモンの働きによって増殖します。エストロゲンは、閉経前の女性では主に卵巣で作られますが、卵巣機能が低下した閉経後の女性では、アロマターゼという酵素が、副腎からごくわずか分泌されている男性ホルモンをエストロゲンに変換しています。アロマターゼ阻害薬は主に閉経後女性に投与されるお薬で、アロマターゼを抑制して体内のエストロゲン量を低下させがん細胞の増殖を抑えます。

アントラサイクリン系製剤

がん細胞のDNAに結合し、その合成を阻害することでがん細胞の増殖を抑制します。代表的な薬剤はアドリアマイシンやエピルビシンです。手術後にアントラサイクリン系薬剤を含む化学療法を行うことで、手術だけの場合より再発率を約3割減少させることができるとの報告があります。副作用として強い心毒性があります。

腋窩(リンパ節)廓清

郭清とはすべてを取り除くという意味で、乳がんでは、患部周辺のリンパ節を取り除く手術のことを言います。乳房から腋窩(えきか、腋の下)といわれる部分にかけては、リンパ管が複雑に走っており、その途中にリンパ節があります。このリンパ管を通ってがん細胞が全身に広がり転移すると考えられているため、転移の道筋を除くために行います。

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か行

筋肉を切除しない非定型的乳房切除

乳房は切除するが、大胸筋、小胸筋を残す手術法で、乳房切除術の中で今最も多く行われています。胸壁の変形が少なく、比較的簡単に乳房を再建できます。しかし、胸筋の神経を傷つけてしまうと筋肉が委縮することがあります。

抗エストロゲン薬

乳がん細胞の表面にはエストロゲン受容体があり、ここにエストロゲン(女性ホルモン)が結合すると増殖します。抗エストロゲン薬とは、エストロゲン受容体に結合するがエストロゲンのような作用を持たない物質です。先にエストロゲン受容体をふさいでエストロゲンと受容体との結合を阻止してがん細胞の増殖を抑制します。閉経前後どちらの女性にも有効ですが、閉経後のほうが効果が高いといわれています。

抗がん剤療法(化学療法)

がん細胞の分裂や増殖を抑える抗がん剤というお薬を使う治療法です。抗がん剤には飲み薬と注射薬があり、また症状によって単独あるいは複数の薬を組み合わせて用います。抗がん剤は血液を介して全身に行き渡るため、もともとの病巣だけでなく転移したがんにも有効ですが、一方で正常な細胞も攻撃してしまうため、しばしば副作用が問題となります。

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さ行

自己触診

自分で乳房を触ることで異常が無いかを調べる方法です。しこりの有無を調べることが重要です。胸の正面からは小さな円を描くように触れ、胸の側面を調べる場合は仰向けに寝て調べる側の腕を上げ、体の側面から乳房に向かって反対側の手の指を滑らせます。やさしくなでるように触るとしこりがわかりやすく、皮膚をつまんでしまうとわかりにくくなります。また、触るだけでなく、赤みや腫れ、引きつれやくぼみなどの形の変化を観察することも大事です。

浸潤がん

非浸潤がんが乳管や小葉の中にとどまっているのに対し、がん細胞が乳管や小葉にある基底膜という膜を破り、血管やリンパ管などの組織にどんどん入り込んで広がっている状態のがんを浸潤がんといいます。全身に転移しやすい状態です。浸潤がんは手術をはじめ、放射線療法、ホルモン療法、分子標的薬、化学療法の組み合わせで治療します。

全生存(OS:Overall Survival)

薬や手術の有効性や安全性を調べる研究を臨床試験といいますが、そこでの治療効果を評価する指標の1つです。症状にかかわらず、試験に参加した患者さんのうち診断または治療から一定の期間が経過した後に生存している人の割合を意味します。横軸に期間、縦軸に割合を示したグラフで表したり、3年後、5年後など一定期間の生存率で表したりして、治療効果を比較します。他に、病気が再発しないで生存している「無再発生存率」や、再発、増悪、合併症などがなく生存している「無イベント生存率」などの指標があります。

センチネル(見張り)リンパ節

センチネルとは「見張り」の意味で、わきの下のリンパ節のうち、乳がんを経由するリンパ液が最初にたどりつくリンパ節をこう呼びます。このリンパ節を検査してがん細胞が見つからなければその先のリンパ節にも転移していない可能性が高いと判断することから、転移の見張り役の意味で名付けられました。このセンチネルリンパ節を調べることをセンチネルリンパ節生検といいます。

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た行

タキサン系製剤

細胞分裂に必要な微小管(チュブリン)の働きを阻害し、がん細胞の分裂を抑制し最終的に死滅させます。代表的な薬剤は、パクリタキセルやドセタキセルです。リンパ節転移のあった患者さんの手術後の再発予防のために、アントラサイクリン系製剤の後に(あるいは同時に)用いられます。再発を約半分に減少できるといわれています。副作用としては、白血球減少、好中球減少、末梢神経障害、悪心嘔吐などがあります。

超音波検査

超音波を乳房に当てて、その反射波(エコー)を画像化し、しこりが良性か悪性か(水か腫瘍かなど)を調べる検査です。マンモグラフィ検査と違い、放射線を使わないので繰り返しの検査が可能で、また妊娠している女性も受けられます。30歳代以下の方では超音波検査を主体とします。

トラスツマブ(ハーセプチン)

分子標的薬と呼ばれる薬の一つです。トラスツマブ(ハーセプチン)は、HER2受容体に結合し、細胞外の物質との結合を阻止してがん細胞の増殖を抑えます。週に1回の点滴注射で投与し、抗がん剤と併用します。正常な細胞にはHER2受容体はほとんどみられないため、がん細胞のみに効果を発揮します。このため、がん細胞だけでなく正常な細胞ダメージを与えてしまう抗がん剤よりも副作用が軽いのが特徴です。

トリプルネガティブ

乳がんの発症、増殖に関係する主な因子はエストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、HER2受容体の3つですが、これらとは全く関係ないメカニズムで起こる乳がんが全体の約2割程度存在し、これをトリプルネガティブ(三重陰性)と呼びます。通常は、これら3因子を標的とした治療を行いますが、トリプルネガティブでは無効で、原因もわかっていないため、一般的に治療が難しく、予後が悪いといわれています。

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な行

乳房温存手術(における整容性)

乳房の形を損なわないように、乳頭、乳輪を残し、腫瘍だけを部分的に切除する術式です。現在は乳がん手術の約半数がこの方法で行われ、その割合は増え続けています。ただし、切除しきれない可能性が残るため、術後に必ず放射線療法を組み合わせます。

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は行

ハルステッドの定型的乳がん根治手術

1900年代初頭にハルステッドという外科医が提唱した乳がんの手術法。乳がんでは、しこりだけを取ってもしばしば再発による死亡例が認められたことから、乳房だけでなく大胸筋、小胸筋、さらにわきの下のリンパ節まで、疑わしい部位は全て切除する術式です。しかしこの方法では、肋骨が浮き出るなど術後の傷跡が目立つ上に、わきの下のリンパ節を取るため腕の末端から心臓に向かうリンパ液の流れが阻害され、腕がむくんだり、感覚が鈍くなったりという後遺症が生じることもあり、だんだん行われなくなってきています。

非浸潤がん

乳がんは乳管や小葉の細胞から発生しますが、がん細胞がこれらの部位の基底膜という膜の中にとどまっている状態のがんを非浸潤がんといいます。言い換えると、転移をしていない早期がんです。非浸潤がんは再発や転移を起こす可能性が低い良性のがんで、手術でほとんど治癒します。

病理学的完全寛解(pCR:pathological complete response)

病理学とは、臓器を顕微鏡レベルで観察する学問のことで、pCRとはもともとの病巣や転移部位を顕微鏡で観察してもがん細胞が死滅または消失している状態のことを言います。治療効果がきわめて高いと判断されます。ちなみに寛解とは、がんや白血病など再発の恐れが否定できない病気で使う言葉で、症状が改善したり見かけ上消滅した状態のことを意味しており、完治とは異なります。

病理検査

病気の診断や原因の究明を目的として、患部の一部を切り取り、組織や細胞などを顕微鏡などで調べる検査のことです。乳がん治療においては、がん細胞の有無を調べる「細胞診」とがん細胞の特徴を調べる「組織診」があります。細胞診は腫瘍部分に細い針を刺して細胞を吸引し、採取した細胞を確認して良性か悪性を調べます。乳頭から分泌物が出ている場合はそれを調べます。組織診は細胞診よりも太い針を腫瘍部分に刺して、細胞1つ1つではなく組織のかたまりを切り取ります。そのため、良性、悪性だけでなく、悪性だった場合はその特徴までわかります。

分子標的薬(抗体療法)

近年、がん細胞の増殖に関わるタンパク質や酵素といった特定の分子が解明されてきたため、それらにだけ作用する薬剤を用いてがん細胞を狙い撃ちすることを可能にした最新の治療法です。正常な細胞にもダメージを与えることが多い抗がん剤と異なり、副作用が少ないといわれています。
たとえばHER2というタンパク質は正常細胞に少ないのですが、乳がん細胞の20~30%では過剰発現しており細胞増殖に関与しています。現在、HER2を標的としたハーセプチンという薬剤が開発され、HER2陽性患者で治療効果をあげています。

ベバシズマブ(アバスチン)

分子標的薬と呼ばれる薬の一つです。がん細胞が増殖するためには、血管から酸素や栄養をもらうことが必要です。そのためがん細胞は血管を増やすように促す物質を分泌しして新たな血管を呼び寄せています。この血管を“新生血管”といいますが、ベバシズマブはこの“新生血管”を増やす物質を抑える作用があります。このため、がん細胞は酸素や栄養が受け取れず、兵糧攻めになり増殖できなくなります。

放射線療法

がん細胞に外から高エネルギーのX線を照射し、がん細胞の遺伝子を傷つけてその増殖を抑えたり、死滅させたりする治療です。がん組織とその周辺だけをターゲットとする局所治療なので、全身への影響が少ないのが特徴です。効果が現れやすく治療中の痛みや副作用が少ないので、手術不能例の治療や、術後の再発予防などさまざまな症例に施行されています。ただし、すでに一定量を照射した人、妊婦、膠原病の人には行えません。

ホルモン受容体

がん細胞の表面に過剰に発生して、細胞外のホルモンと結合する受容体(タンパク質)です。すべてではありませんが、乳がんの細胞の中には女性ホルモンの1つである「エストロゲン」と結合して増殖する性質のものがあり、エストロゲンと結合すると、ホルモン受容体ががん細胞に“増殖しなさい”と信号を送り、増殖が開始します。ちなみに、がん細胞がこのような性質を持つことを「ホルモン感受性がある」といいます。

ホルモン療法(内分泌療法)

特定のホルモンによって増殖するタイプのがんを治療する方法の1つで、そのホルモンを分泌している臓器を手術で取り除いたり、反対の作用を持つホルモンを投与したりします。乳がんではエストロゲンを主に産生している卵巣切除や、男性ホルモンの投与を行います。がん細胞を殺すのではなく、長期間にわたって増殖を抑制してコントロールすることが目的です。

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ま行

マンモグラフィ(検査)

乳房を上下と左右からはさんで圧迫し、なるべく薄くしてX線(放射能)で撮影する検査です。触診ではわからないような小さながんや、乳管内に存在するがん細胞からの分泌物や死んだがん細胞による石灰化を発見できます。ただし、妊娠している人は受けられません。基本的に40歳代以降の人が対象になりますが、石灰化はマンモグラフィ検査でしか確認できないため、30歳代以下の人でも行う場合があります。

無増悪生存(PFS:Progression-free survival)

薬や手術の有効性や安全性を調べる研究を臨床試験といいますが、そこでの治療効果を評価する指標の1つです。試験に参加した患者さんのがんが進行することなく生存している人の割合を意味します。

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や行

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ら行

リンパ節転移

乳がんが再発・転移しやすい部位にリンパ節があります。わきの下のリンパ節(腋窩リンパ節)のほか、首のリンパ節(鎖骨上リンパ節)や胸骨のそばの肋骨の間のリンパ節(胸骨傍リンパ節)などに起こります。触るとしこりを感じたり、しこりが神経を圧迫して痛みを感じることがあります。通常、放射線療法、化学療法、ホルモン療法などを行い、強い痛みが続く場合は鎮痛剤を併用します。

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わ行

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英数字

HER2受容体

HER2は細胞表面に存在する糖タンパクの1種で、正常な細胞にも存在し心臓や神経の発達や、細胞の分化・増殖などに関与しています。乳がんの中に、HER2受容体が過剰に発現し、そこに細胞外から何らかの刺激が加わることで細胞増殖が開始されがん化するタイプが存在します。ちなみに“受容体”とは、外界からの刺激を受け取り、細胞内に伝達する作用を持つたんぱく質です。

LH-RH(アゴニスト)製剤

乳がんの細胞の中には女性ホルモンの1つである「エストロゲン」と結合して増殖する性質のものがありますが、そのエストロゲンを卵巣から分泌されないようにするお薬です。卵巣が機能している閉経前の女性に処方されます。通常、手術後2年間くらい投与され、この間、基本的に生理はとまります。年齢によって差がありますが、生理は投与終了後半年ぐらいで回復することが多いとされています。

St.Gallen(ザンクトガレン)会議

2年に1回スイスの古都ザンクトガレンで開催され、世界各国から集まった乳がん治療の専門家によって、早期乳がんの治療法を話し合う重要な会議です。最終日に行われる「コンセンサス会議」で毎回新たな治療指針が示されます。日本の乳がん治療にも大きな影響力を持ちます。