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News Release
医語よろしく

2016年1月~

【2016.2.12】

著名人のがん報道に思うこと


テレビのニュース番組でのアナウンサーの言葉・・ 「俳優の某さんが、早期の○●がんと診断され都内の病院で手術を受け、一週間後の昨日退院となりました.退院後の会見では、初期のがんだったので仕事にも早く復帰出来そうですと、元気に語りました。」
この件に関する新聞の大見出しは
「俳優の某さん、早期の○●がん」である。もちろん一目でわかる大きな「早期」の文字。

必ずこんな具合で、「早期」とか「初期」だのをことさら強調して報道されると、逆にそれがひどく鼻について、私には不愉快に感じられる。もちろん視聴者の一般人たちが、重大な病状でなく良かったと安心できる好意の報道であり、ひいては早期発見のためのがん検診や人間ドック受診の啓発のためにも、一役買ってくれているのだが・・・。

がんでなくても、このたぐいの著名人の病状関連報道はじつによく見かける。
「血圧が若干高く・・」とか、「わずかに病状が進行し・・」とか、「軽度の○○のため入院となったが・・」必ずなにやら枕詞のように、ことさら重大ではないことを表す形容詞が付いて報道される。「じゃっかん」とか「けーど」とか、どこまでが若干でどこからが重大なのかはっきり定義をのべよ!と、へそ曲がりかもしれないがどうも気にいらない。

がんの話に戻ろう。万一、ソーキでなかったらどうなるんだろう?
「タレントのかれこれさんが、進行した△◆がんと診断され5時間に及ぶ大手術をうけ、2ヶ月後の昨日ようやく退院し、やつれた表情で記者会見場に現れました」とでも報道するのだろうか?

真実を伝えるとか国民の知る権利とかいうのであれば、この手の報道もありそうだが、実際には倫理的な配慮により、そのような伝え方は決してあり得ない。早期とか初期とかの枕詞が付かない報道は、「重たい病状で大変そうだ」と、すぐに感じられてしまうので、なおさら「そーき」を連発し「病状は軽いと伝えよう」という報道とのアンバランスさに違和感が残る。

軽いことは大々的に、重いことは包み隠してこっそりと・・というコミュニケーションの取り方は、昔の医師―患者間の病状報告のやり方を思い出させる、古くさい印象すら与える。いかなる病状であっても、もっと淡々と色を付けずに伝えるべきではないのか。某新聞社の昔の記事の問題で話題になったような「角度の付いた報道」は、医療関係の報道に関しても、必要でないどころか、慎むべきであるとさえ思うのだが・・。