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News Release
医語よろしく

2015年1月~

【2015.8.19】

親父が昔外科医だと・・・その3


かくして、息子が夜間救急外科当番病院で急性虫垂炎の緊急手術を受けた話第3弾。

手術室立ち会いを断られた父親はおとなしく家族控え室で待つことになった。手術場の入り口からストレッチャーで入室したのが11時過ぎ、手術はまさに真夜中に始まった。

前回もお伝えしたが父親は若い頃多くの虫垂炎手術を手がけて、麻酔開始から小1時間もすれば手術が終わる事を覚えている。息子の手術に立ち会えなかった残念さも手伝って昔外科医の感覚がよみがえる。このくらいの経過時間ならあの血管の処理をしているはず、今はこのあたり、そろそろ腹膜を閉じて終わりかなと、なまじ手術内容を知っているだけに手術の進み具合を想像し、遅々として進まない時計の針とにらめっこしつつ、ひたすら待つ身。

腹腔鏡の手術は視野を広く取れないため作業が難しく、通常の開腹手術に比べて1.5~2倍くらい時間がかかるとされるが、まあ1時間もあれば終わるだろうに、しかし12時半を過ぎてもまだ連絡はない。これって時間がかかりすぎてないか? 1時に なってもまだ終わらず。何か良くないことが起きたのでは?炎症がひどくて癒着剥離が大変なのか?途中、腸管を傷つけた?止血できなくて開腹手術に切り替えたのか?となると、術後数日での退院は無理!来週の試験は受けられないのか?1時15分、入室後2時間も経つのにまだ終わらず、いよいよおおごとが起きたに違いない、と、不安がピークに達したころ、担当医が「手術終わりました」と、切除した虫垂を脳盆にのせて控え室横の説明室にやってきたのが1時半。

開口一番「先生ずいぶん時間かかりましたね」実に失礼な言葉、余計なことを口走ってしまったがもう取り消しようがない。しかし当の執刀医の先生は顔色ひとつ変えず、それなりに立派な虫垂炎で、後腹膜の癒着剥離に手間がかかったこと、特に何のトラブルもなく手術は終わったこと、おそらく今後も順調に回復するであろう事を穏やかに伝えてくれた。その後、病室に移った息子の顔を見てようやく安堵し、重大なことが起きて開腹手術に切り替わったに違いないと、勝手にいらぬ不安を募らせた自らの浅はかな知恵の巡りを反省。なまじ昔の知識があるとろくな事を考えないね、ためになりませんなあ昔の外科医のお父さん。

その後息子は予定通り順調に回復し翌々日水曜の朝には退院、木曜から普通に通学し翌週の試験も無事合格。おまけに手術から1ヶ月後には全国(東日本)から数十校が集う夏のサッカー大会でセンターFWとして活躍しチームは準優勝。アッペ(虫垂炎)術後1ヶ月での銀メダルである。昔の開腹手術の経過からは考えられない恐るべし腹腔鏡術後の回復力。

今考えると、連れて行った救急当番病院、夜間の緊急手術を即選択したこと、すべてが大正解、超ラッキーの出来事であった。

救急外来、手術、術後にお世話になった〇〇メデイカルセンターの先生方スタッフの皆様、お世話になりました。また数々、失礼をいたしましたことお許しください、お詫び申し上げます。ありがとうございました。