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News Release
医語よろしく
2015年1月~
【2015.8.6】
親父が昔外科医だと・・・その2
かくして、息子が夜間救急外科当番病院で急性虫垂炎の緊急手術を受けた話の第2弾。
私の医者人生は一般外科医からスタートしているので、今から30年前にはたくさんの虫垂炎の手術を手がけ、手術時間、手際の良さ、創の小ささ、綺麗さなど、手術の腕にはかなりの自信があった。当時の手術法は右下腹部皮膚に数センチの切り傷をつけいわゆる小切開開腹手術、麻酔は腰椎麻酔。実は自らも中3の時に虫垂炎の手術を受けているので右下腹には5センチ程度の術創があるが、「俺がやる手術はもっと小さな創で出来るぞ」ってとこまで腕を磨いた若き優秀な外科医であった。(自分で言うか?!)
今の虫垂切除術は、全身麻酔下の腹腔鏡手術で行うとのこと。臍の下の小さな創から腹腔鏡を入れ、左右の脇腹には鉗子が入る1センチ程度の綺麗な創が二つ。まあずいぶん手術法も進んだもんだ。
けっして昔の外科医の血が騒いだわけではないが、メスを持つ仕事をしていた人間なら、身内の手術には立ち会いたいと思うのはきわめて自然な発想、むしろそれは昔外科医である父親の責務かもしれないと考え、「手術室に立ち会って見学させて欲しい」と、担当医にお願いした。
自分がバリバリの外科医の頃には、患者さんの身内の医療関係者が希望すれば手術室に入ってもらったので、今回もなんなく許可してもらえるとタカをくくっていた。しかし、返事は・・・NO! 。スタッフ以外を手術室に入れたことがない・・という理由で、手術の立ち会いはきっぱり断られた。
手術室に入れず家族控え室で手術が終わるのをじっと待つ間に、諸々考えたこと・・
「おまえは元外科医だろ!息子の手術に立ち会えないなんて、なんという情けない父親だ!」
「やっぱり、自分の出身科(1外科)の関連病院でないから、無理をきいてもらえないんだ」
「ガチの医療従事者(外科医)なんだから身内の手術くらい見せてくれよ」と、自らを責めつつ少々病院側に対する不満も感じつつ。
しかし、また昔の外科医はおのれの愚かさにハタと気がついた。私がもし手術室に入れば、医療関係者なだけに、執刀医、助手その他のスタッフ達は気を遣いかえって緊張するだろう。チーム全体に違和感が生ずれば、当の手術に悪影響を及ぼしかねない。手術は、いつも通り滞りなく行われることが一番大事。ゆえに私の手術室立ち会いは、息子の手術には百害あって一利なし。
結局、父親の(元)外科医としてのプライドや責務などなんぼのもんじゃい!身内の手術に立ち会いたい昔外科医の父親であっても、おとなしく家族控え室で待つことがベスト、ってことに気づかされたわけである。
というだけで、なまじメスを持ったことがある昔外科医の父親の考えることは、やっぱりためになりませんなぁ
その3に続きます