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News Release
医語よろしく

2013年1月~

【2013.5.29】

アンジェリーナジョリーが受けた乳房切除とは?


アメリカの人気女優アンジェリーナ・ジョリー(37)が、乳がんのリスクを減らす予防措置で両乳房を切除した・・・彼女は母親や叔母を乳がんで亡くしている。とはいえ、まだがんでもないのに乳房切除とは・・・と、話題が話題を呼び、・・・みなさまご存じのニュースである。乳腺専門医のひとりとして、この件に関してはもの申したいことが実はたくさんあるのだが、どうしても皆さんに正しく知っておいてほしいことがあるので、それについてのみコメントすることにしよう。

まず、この件で「乳房切除」と聞くと、乳房の高まりを切り取ってしまった・・とのイメージをもつ人がほとんどであろうが、実はまったくそういう手術ではない。つまり、通常の乳房切除(皮膚や乳頭ごと乳房を切除してしまう手術): 挿絵A ではない。

挿絵A 挿絵B

アンジェリーナが受けたのは、乳頭乳輪や乳房の皮膚はそのままで乳房の中身の乳腺実質、乳腺組織だけを全てくりぬく手術。日本語では「乳頭温存乳房切除」もしくは「皮下乳腺全切除」という。挿絵B

乳がんは乳腺組織から発生する。乳腺さえ取ってしまえば乳がんのできる場所がなくなるわけだから、当然発がんのリスクは減る。乳頭の下にわずかに残る乳腺組織が将来の発がんの発生危険度5%を意味するのだろう。

さらに、乳頭乳輪が残せれば、外見、見た目はずいぶん保たれる。美容形成外科的にもその後は中身の高まりをどう快復させるかだけ考慮すればよいのだから、あとは楽。乳腺をくりぬいたスペースに、最終的にインプラントを入れれば、外から見た乳房の形は前のまま・・・ もとあった自分の乳腺組織よりもボリュームたっぷりのインプラントにすれば、ひょっとすると前よりも立派な美しい乳房になり、ある意味では豊胸手術にさえなる。

理屈としては乳腺くりぬき切除だけで乳がん発生の危険はほぼ回避できるし、その後の美容再建もしやすい。彼女が受けたのは実はこういう手術である。

「がんでもないのに“お乳”を切り取ったって?」・・のようなイメージが余りに蔓延してしまっているので、実は、そんな手術ではなかったということを、皆さんにまず正しく理解してほしい。

この次は、彼女がうけたBRCA1という、確かに家系的に発生する遺伝性乳がんの遺伝子検査のことについて、コメントしよう。