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News Release
医語よろしく

2011年1月~

【2011.12.2】

アバソール その3 (ホルモン陽性例にもアバソール)

認定医X:
HER2陰性乳がんが再発したときの、抗がん剤治療の使い方なんですが、実は再発乳がんでもホルモン剤が効く患者さんがかなり多いじゃないですか、6-7割はそうだと思いますよ。ってことは、再発治療の際にも普通はホルモン剤から最初治療するでしょ。大体、ホルモン剤が良くきくような患者さんはもともと予後がいいので、仮にホルモン剤がいよいよ効かなくなっても、本当にその後に抗がん剤なんて効んですかね?それだけじゃなくて、そういう抗がん剤の効果を増強するアバスチンなんて、ホルモン剤が効く患者さんには本当に必要なんですか?
専門医A:
今度はその話か・・・君はそもそも、アバスチンって、どういう患者さんが対象になると思ってたんだい? ホルモン感受性のある患者さんは、アバスチンを使う対象にならないと思ってた?
認定医X:
もちろんですよ、HER2陰性再発乳がん患者さんに対する抗がん剤治療なんですから、もし治療対象になるとすれば、HER2陰性①、エストロゲン受容体陰性②、プロゲステロン受容体陰性③のいわゆるトリプルネガテイブ乳がんが、唯一のアバスチンの対象と思ってました。
専門医A:
うん、トリプルネガテイブの患者さんには、そりゃ絶対使わなくちゃだめだな。従来のタキサン系やアンスラサイクリン系の抗がん剤では、これまで十分な治療効果を得られなかったんだから、アバスチンは絶対にその患者さん達の役に立つはずだ。だから、トリプルネガテイブ乳がんの患者さんに、アバスチンはマストの薬さ・・・じゃあさ、君が言うように、ホルモン感受性がある患者さんには、本当にアバスチンは有効ではないんだろうか?
認定医X:
再発治療でさんざんホルモン剤を使った患者さんには、抗がん剤もアバスチンも効きそうもないですよね?
専門医A:
そこだよ。日本で承認になる根拠になった臨床試験で、じつは、ホルモン陽性の患者さんのグループ、とか、再発治療にホルモン剤を何種類も使い果たした患者さんでも、いざ抗がん剤治療が必要になった時、タキソールとアバスチンの併用療法つまり「アバソール」を使ってみたら、実に有効であったという結果が示されているんだよ。
認定医X:
ほ、ほんとですか?再発治療のホルモン剤をさんざん使った後でも本当にアバスチンが効いているんですか? そうなんですか?。そりゃあ、僕は全く勘違いしてましたよ。
専門医A:
君が診てる患者さんでさ、再発治療でホルモン剤をずーっと使っていて、順繰りに何種類かのホルモン剤を遣い尽くして、そろそろだんだん効きが悪くなってきたなあ、とか、転移してる頚部のリンパ節がちょっと一回り大きくなったかもしれないなあとか、マーカーがだんだん上がって来ちゃったなあとか、それで、そろそろホルモン剤から抗がん剤に切り替えた方がいいかもしれないけどどうしようか・・って患者さん・・いるだろう?
認定医X:
いますよ、う~~ん、あの患者さんとあの患者さんと・・・けっこう何人もいるかもしれません。
専門医A:
いるだろう?で、その患者さん達、この後どういう治療するつもりでいたんだい?
認定医X:
まあ、もしまだゆっくり治療出来るんなら飲み薬のFU剤(ゼローダ)ですかね。でももう痛いとかつらいとか、苦しいとか、何か症状があったり、もう結構大きくなっちゃった・・・みたいな、治療を急いであげた方がいい患者さんには・・う~~ん、抗がん剤の点滴ですかね。
専門医A:
そういう患者さんが、すべてアバソールの対象になるわけだよ。ホルモン剤がもう効かなくなっちゃったら、当然次は抗がん剤の出番なんだから・・・
認定医X:
ちょっと待ってください。抗がん剤の出番・・ってのは判りますが、仮に治療の緊急性がなかったら、注射薬の抗がん剤でなくってもいいんじゃないですか?そうしたらアバスチンも要らないと思うんですけど・・
専門医A:
例えば、経口FU剤のゼローダも、もちろんいい薬だけどね。やっぱりこういう時にも、点滴のタキソールとアバスチン「アバソール」を先に使う方がいいんだよ。そうだ・・つぎは、やはり少しでも再発の早い段階からアバスチン使った方がいいっていう話をしようか。
認定医X:
はあ?そんなルールがあるんですか?
専門医A:
いいや、ルールっていうより、薬の性質、薬の特徴の話だよ。君も認定医ならこのくらいは判ってなきゃだめだぞ・・乳がんはより小さい時早い段階にこそ血管新生因子が増殖の重要な要素になるんだよ。しこりがだんだん大きくなった後には、実はがんを育てる因子は種々多数になり、血管新生因子だけが増殖に関わるわけではなくなってしまう。ってことは、この血管新生阻害を治療根拠とするアバスチンは、より早い段階で使ってこそ、効果を発揮出来るってことさ。つまり、がんが大きくなって病状が進んできてしまった後の方の段階になってからでは、せっかくアバスチンを使っても効果は十分発揮されないかもしれない、要は乳がんが再発して化学療法(抗がん剤治療)を行う際には、より早い段階でアバスチンを使ったほうがいい、ってことだよ。だから、ゼローダよりも先にアバスチンを使う方が、理論的にはベターだろ?
認定医X:
なるほどそういうことですか。だったら、抗がん剤が必要になったら、まず最初に「アバソール」、経口剤のゼローダはアバソールが効かなくなってからでもいいっていうわけですね。ってことは、トリプルネガテイブでもホルモン陽性例でも、どっちにしても、乳がんの再発治療で抗がん剤が必要なら、何をさておき、まずアバソールを最初に使うべきだってことですね。
専門医A:
そぅ、そぅいうこと・・ややこしいこと考える必要は、全くないのさ、以前タキサン系抗がん剤(タキソール)を使った既往があるのかないのか、とか、ホルモン剤を使った後なのかどうかとか、前にやった治療薬の種類はどうであれ、要は、HER2陰性乳がんが再発したら、抗がん剤治療の第一選択薬は「アバソール」ってことさ!!

・・・・某施設乳腺科の専門医Aと認定医Xの会話はさらに続きます・・・

注:「アバソール=アバスチン+タキソール、一般名ベバシタキセル、ドクターによっては タキソチンと呼ぶものもいるがきわめて少数である」