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News Release
医語よろしく

2011年1月~

【2011.4.26】

本の書評
帝京大学ちば総合医療センター 外科 鈴木正人先生より

このたび出版となった私の本が、ある雑誌で紹介されるにあたり、同じく千葉県内で乳腺専門医としてお仕事をご一緒している帝京大市原医療センターの鈴木正人先生が、推薦文を書評として書いてくださいました。ご了解を得て、このHPでもご紹介させていただくこととします。

鈴木先生、ありがとうございました。

宮内先生の本 書評

乳がんが女性のがんの第一位になって久しい。千葉県においては1991年に胃がんを抜いてトップの座につき、現在までその地位は変わらない。毎年4万人以上が罹患し、1万人が亡くなる。しかしながら、乳がんは再発などを起こし病状が重たくなる方よりも元気に治癒する方の方がはるかに多いがんであり、実際、早期の乳がん(Stage1)であれば10年生存率は概ね9割を超える。

EBMという言葉が広く知られるようになり、エビデンス(根拠)となる臨床試験の結果がリアルタイムに日本にも入ってくる現在、「最適な情報」を最新の状態でキャッチアップすることは、専門の医師にとっても大変な作業である。ましてやTVやインターネットなどの情報が氾濫する現在、医学知識の素人である患者さんが、正しい情報を的確に得るのは大変な困難を伴うことであろう。本書は乳がんの基礎知識や検査についての解説に始まり、実際の患者さんが最も知りたい情報である「治療」について、70%以上もの紙面が割かれており、かつ患者さんでもたやすく理解できるような平易な文章で書かれている。

乳がんの治療法は過去20年で大きく変化した。それはパラダイムシフトであり、「メスで悪いモノ(がん)をすべて取り去る(根治術)」という外科的な考え方(19世紀のハルステッドの理論)から、「がんは発見時にすでに全身病と考え、メスだけでは取りきれないので、切除は最低限にとどめ全身の薬物治療を重視する」という考え方への移行である。

著者の宮内先生はちょうどその激動の時代を、千葉大学第一外科、千葉県がんセンターで乳がん治療に従事され、千葉県のトップリーダーとして活躍された。特に、乳がん手術のうちでも最も患者さんの不利益を生ずるとされる腋窩リンパ節郭清に替わる「センチネルリンパ節生検」に関しては、日本の先駆けである。先生は千葉県を代表する乳腺専門医であり、県がんセンター退職後も乳がんに対する医療情報を提供するブレストサービス社の代表として活躍されており、今回その宮内先生が本書を上梓されたことは、千葉大学乳腺研究室の後輩として非常に喜ばしく、かつ誇らしく思う。

本書が多くの患者さんに読まれ、その方々が正しい情報を得ることによって、希望と安心をもって「乳がんに克つ」ことを祈念してやまない。

平成23年4月吉日

帝京大学ちば総合医療センター 外科 鈴木正人