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News Release
医語よろしく

2011年1月~

【2011.4.8】

本が出版されました

以前から準備をしていた、一般の方や患者さん、ご家族向けの「乳がんの本」が、発売になりました。
巻頭の文をご案内します。

ご購入はこちらから

はじめに

乳腺クリニックの外来で、乳がん検診を初めてお受けになる方が最近とても増えています。検診の対象年齢に達してもこれまで受診されなかった方が、なぜ今回来院しようと思われたのかたずねると、ほとんどの方が「親戚のだれそれが乳がんになった」とか「職場の同僚が乳がんの手術をしたから」とか、皆さん決して他人事ではないとお感じになって受診を決めたようです。

90年代の半ばから日本でも女性がんのなかで乳がんの罹患率はトップになり、いまや日本人女性の20人に1人が一生のうちに乳がんになるといわれています。女性が家族や職場などで特に必要とされる40代後半~50歳の時期に発見されることが多く、さらに60歳代など年齢層の高い方のなかでも増えつづけています。また30~40歳代の女性ががんで亡くなる一番の原因が乳がんであることも事実です。最近では受診者の中に20歳代の方も見受けられます。

日本での乳がん増加の要因は、ライフスタイルの欧米化があげられています。以前より初潮年齢は早くなり閉経も遅くなりました。少子化現象に見られるように、職場でばりばり働きたいからなかなか結婚もせず、結果として子供の数も減り授乳の期間も短くなることで、実は卵巣由来の女性ホルモンが、女性の一生のうち、乳腺の細胞を刺激する期間が長くなるため乳がんの発生の機会が増えてしまったのです。しかしライフスタイルはわずか数年で大きく変わることはありません。今後もしばらく日本の乳がんは増えつづけ、2015年には罹患者数は年間5万人に達すると予測されています。

しかしこうして増え続ける乳がんに対して、現在のところその発生を予防するための有効な手だてはありません。したがって、少しでも早く乳がんを発見すること(早期発見)で、命に関わる重大な病状になる前に治療を開始すること、さらに手術のみでなく必要なタイミングに最も有効とされる薬剤による全身治療を施すことによって、乳がんを治癒させることが大切なのです。

本書を手にとられた方は、何らかの形で「乳がん」との接点が生じ、情報を集め勉強をしようと思われていることでしょう。検診を受けたあと結果が心配、乳がんを指摘されたがどこの病院でどのような治療を受ければいいのか・・・、さらに今まさに乳がんの治療をお受けになられている患者さんは、現在の自分の病状や今後のことが不安になったり、今ご自分が受けられている治療は、はたして正しい治療で自分にふさわしいのかと疑問を感じたりと、長い乳がん診療の間には、さまざまな「?」が頭をよぎることでしょう。

そうした不安をお持ちのかたもおひとりで悩まないでください。知らないこと(情報不足)は怖さや不安を助長します。さらに不安は医療不信にもつながりかねません。正しい情報を得ることは最新の有効な治療にも匹敵します。正しい情報、ご自分に必要な情報を的確に収集することが、これから先の診断や治療に向かう意欲や安心感を引き出してくれるはずです。

私は以前、県がんセンターの乳腺外科で多くの乳がん患者さんの診療に携わりましたが、2001年にセンターを退職し、患者さん達の医療相談をお受けする会社を立ち上げました。

「病院の診療中には詳しい話を聞かせてもらえなかった」、「満足のいく説明を受けられなかった」、さらに「心配で不安で夜も眠れない」など、患者さんは様々なご相談をされますが、ほとんどの場合が情報不足、説明不足、主治医とのコミュニケーション不足が原因です。私の相談室で30分~1時間とお話しするうちに、皆さん表情が明るくなり、部屋を出て行かれるときには明らかに来社の時とは違って元気にお帰りになります。

あなたに最も適した方法で乳がんを克服できるよう、診断について、病気について、治療について、よく知っていただきたいと思います。

そのために、本書がお手伝いできれば、これほど喜ばしいことはありません。

平成23年4月

宮内 充