? 乳癌学会レポートⅡ ワークショップ 「内分泌感受性HER2陽性乳癌の治療戦略」を聴いて・・|医語よろしく|乳がん情報ならブレストサービス
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News Release
医語よろしく

2010年1月~

【2010.7.16】

乳癌学会レポートⅡ
ワークショップ
「内分泌感受性HER2陽性乳癌の治療戦略」を聴いて・・

最近は、Luminal B (厳密にはLuminal HER2)にはターゲットとなる治療薬、内分泌療法とTrastuzumab(以下T)+化学療法(以下C)を選択する事で治療の個別化がはかられているが、実は特にHER2陽性乳癌のERの発現率にheterogenityが強く、HRの発現がきわめて低いケースも多く確認されており、必ずしも治療薬選択は画一的で容易なわけではない。

このワークショップの目的は、このpopulationの中には、内分泌療法を確実に行えばTもCも必要ではない例があるはずで、その見分け方や拾い出し方、治療戦略を議論しようというものである。

各演題はこれまでの症例からのhistoricalな予後因子の検討や、術前薬物療法の反応性からの検討など、多くの方向からアプローチがなされており、ホルモン感受性の高い癌はCやTの効果が弱いこと、ホルモン感受性が低ければ術前化学療法にTを加えてもpCRは向上しないことなどが指摘されていた。

さらに、ER、HER2ともに陽性の1cm以下の小腫瘤に対して内分泌治療薬だけで再発を1例も経験しなかったためTは不要であるという報告もあったが、症例数がわずか十数例とまだ少ないためと妥当な結語ではなかった。現に論文報告としてもTの必要性を説いた論文が2報、その論文に対して批判的な報告も1報あり、さらに議論は必要である。

また術前薬物療法によって得られるpCRは、予後のサロゲートとして重要視されていたが、必ずしも術前にpCRに至らずとも長期予後が保証される例もあり、術前薬物療法でのpCRの位置づけと術前ホルモン療法の意義を再度考えようという前向きの意見もあった。

聖路加の北野先生は、それぞれの染色性をAllredスコアとHER2の染色細胞の割合から両者のバランスで症例を分類し治療成績を見た結果、ERレベルの高いものはTの上乗せ効果はない、逆にERレベルが低いとTがよく効くという報告をしたがで、このバランスシートの考え方が大変理にかなっており、個人的にはこのワークショップの中で最も示唆に富む演題であったと考える。

最後に座長の堀口先生が、ERとHER2のIHCの染色状況は、両ターゲットが一致して染色される場合(co-expression type)と別々に染色されるdifferentiated typeとがあり、さらに腫瘍内でそれが不規則に分布していたり、発現状況はきわめて多様複雑で、染色性のバランスとheterogenityを十分考慮して治療薬を選択すべきであると、この会を締めくくってくれた。さらに、St.Gallen2009で初にお目見えした細胞増殖のスピードを表すKi67の発現の程度は、すでに化学療法剤を選択するための必須の臨床情報になりつつあり、どうやら 今後は ER、HER2、Ki67の3つの因子を中心とした新たな層別化が必須になるものと思われる。