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News Release
医語よろしく

2010年1月~

【2010.7.9】

乳癌学会レポートⅠ
モーニングセミナー
40歳代の定期マンモグラフィ検診はすべきでない―
―米国新ガイドラインの意味するもの―  を聴いて・・・・

日本の乳がん死亡数は増え続けている一方、欧米の乳がん死亡者数は90年代から低下し始めており、それはマンモグラフィ検診の普及が恩恵にあると評価されているにもかかわらず、昨年、米国予防医学特別作業部会 (USPSTF)がまとめたガイドラインで、40歳代のルチンのMMG検診は推奨すべきでない(推奨グレードC)と報告され、全世界に衝撃が走った。

米国のそのような動きは、実は米国内の経済状況を強く反映し、大幅に医療費を削減せねばならないことがそもそもの始まりであったが、scienceとは別角度の理由だけでなく、被爆、撮影時疼痛、検査時不安、偽陽性偽陰性の存在、過剰診断などの「不利益」が、MMG検診にて得られる15%の死亡率減少効果:「利益」を上回るという、医学的根拠によっても理論武装されていた。

しかしこの改訂はどうも「不利益」を重大にとらえすぎている感があり、日本人の場合には、40歳という最も罹患率の高い年齢層であることを考慮すると、天秤の傾きはむしろ「利益」側に傾いていると考えるべきである。

この作業部会の報告はある意味では確信犯的であり、多くの議論が巻き起こることを望んでいた感がある。患者団体からの抗議も続き、さらに未だにこれに追随するような「負」の報告よりも、従来通り行うべきであるという「前向き」の論調や報告書の方が多いし、実は、このような報告書が出された後でも、米国での40歳代のルチンのMMG検診は相変わらず行われているとも聞く。

いざ日本に目を向けると、欧米のガイドラインや緊急報告に過剰反応する日本の軟弱な医療体制にしては、日本乳癌検診学会などもしかるべきコメントを早期に発表したため現場が混乱せずにすんでいる。日本でもおそらくしばらくの間は従来通り行われることは間違いない。

しかし今後は、指摘されたような検診の不利益に関しても十分に考慮し、受診者(検診対象者)にもそれを正しく伝える必要性は確かにある。これまで検診を進める上で、このような「不利益」に対する情報提供がなされたことはおそらく一度もなかったであろうから、この「確信犯的作業部会報告」は、今後の乳癌検診のあり方について一石を投じたのかもしれない。