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News Release
医語よろしく

2009年1月~

【2009.2.1】

構築の乱れ、カテゴリー3 ?

ある知り合いのライターさんから、こんな話を聞いた。本屋で医療関連の雑誌をながめていたら、隣の40歳くらいの女性から「私、乳がんの本を探しているんですけど、何かお奨めの良い本はないでしょうか?」と尋ねられたので、どんな事を調べたいのか聞いてみると、「マンモグラフィ検診を受けたら、郵送された結果の報告書に、『要精検:カテゴリー3:左マンモグラフィに構築の乱れあり、医療機関で精密検査をお受け下さい』とあったんですが、どんな異常で何が起こっているのか不安で不安で毎日怖くて、病院の予約日までまだだいぶ日数があるので、自分でそれを勉強しょうと思って本屋に来たんです」と、彼女泣きそうな顔で答えたんです。なんてお返事したらいいか困ってしまいました。と・・・・

検診の結果を伝え精密検査の受診を促すために、実はこのようなやり方をしている所は非常に多いが、私は全くばかげた方法であると思う。カテゴリー3だの構築の乱れだの、医療従事者間で使われる専門用語をなぜ受診者に伝える必要があるのだろうか?必要どころか、知らない単語を並べたあげく「精密検査を要する」では、一般の方が不安を感じるのは当たり前だろう。

もっとお粗末なことに、マンモの読影医が記載する所見用紙そのもののコピーを受診者に送りつける自治体や検診施設もあり、それはそれは生々しい絵が描かれていたり,ダブルチェックの医師(2名の医師が別々に読影すること)の間でやりとりされた専門用語のコメントなどもそのままコピーされており、加えて構築の乱れ(?)カテゴリー3(??)とくれば、受診者の不安をあおる効果は抜群で、無神経きわまりないそんなやり方には、私は憤りすら覚える。

「どこの所見をどう判断したから要精検にした」という、精検依頼先への紹介状、医療情報提供書は必要だろうが、その専門用語による内容までも当の受診者に伝える必要は全くない。普通の診療でも、ある病院から別の医療機関への紹介状を患者さんに渡すとき、封筒にも入れず紙のままで「専門用語で書いてあるけど、どうぞ勝手に読んで良いよ」などと手渡すところはどこにもないだろう。一般の方(受診者や患者さん)へ伝えるべき事と、精検医療機関に必要な情報提供をごっちゃにして、横着して紙一枚ですませようとするから、受診者が知る必要もない専門用語がひとり歩きしてしまうのである。

診察室で検診受診者や患者さんに話をするときでも、カテゴリーがいくつ・・だの、構築の乱れ、FAD(局所的非対称性陰影)だの、微小石灰化とかの専門用語は、私はいちども使ったことがない。口で言ったって素人さんにとっては知らない医療用語は"怖い"のに、紙一枚にそれだけ書かれて送られてくることが、いかに無神経、不親切、不誠実かおわかりになるだろう。

本来であれば、担当する医師が実際のマンモグラフィを見せながら、「この部分が少し不規則に見えるから、奥に何か異常がないかどうか超音波など詳しい検査を受けておいた方が良いよ」:と言う直接の説明があってはじめて「構築の乱れ:要精検」の意味を素人さんは理解する。しかし、すべての検診機関で直接ドクターが面と向かって検診結果を伝えることは、現実的には不可能であろうから、多くの場合は「結果報告書の郵送」という方法を取らざるを得ないのだろうが・・・

ならばどうすれば良いか? 「前回のマングラフィでは、一部に、より精密な検査を要するところが見られましたので、医療機関への受診をお奨めします」と受診者宛に書いた紙と、別の封筒に読影所見用紙を入れて精検依頼施設への紹介状として封をしたものを一緒に受診者に送り、その紹介状(読影所見在中の封筒)を持って精検施設を受診してもらう。カテゴリーだの構築の云々など、怖そうな専門用語を目にしなくても、受診者には精密検査を受ける必要性は十分に伝えられるし、紹介状をもらった精検施設にも要精検になった理由は確実に情報提供される。

2月は自治体や主婦検診などの年度の最後の月。この一ヶ月は駆け込み的受診者もふくめ乳がん検診機関は大忙しになるだろうが、むやみに不安をあおるような結果の伝え方は、ぜひやめてもらいたい。某先生の最近のはやりの言葉を借りれば、「もうちょっと脳ミソ使えよ、各検診機関の無神経な担当者のみなさん!」ってとこですか・・・