医語よろしく
2008年1月〜
2008.10.30
乳腺外科医の目指すもの
聖路加病院乳腺外科の矢形先生からご指名をうけ、乳房温存手術に理解の深い(?)乳腺外科医や形成外科医が全国から集まり、「温存手術の際に乳房をきれいに保つための工夫」について議論をする会が行われている。「乳房温存手術における整容性に関する検討会」と呼ばれており、(勝手に「矢形の会」とも呼んでいる) 私もそのメンバーにさせていただいているので、先の土曜日に聖路加病院まで出かけていった。

これまでの自分の経験がお役に立つのであればと、協力を惜しむつもりはないが、なにぶん皆さんお忙しい先生方なので(お忙しくない先生など居るのだろうか?)週末にしか集まることが出来ず、この矢形の会のおかげ(?)でいつも土曜や日曜がつぶれてしまう。私としては週末をつぶされることには大反対であるが、(特に今などは最高の紅葉ドライブの時期)、九州や仙台から参加される先生もおられるので、あまりわがままばかりも言えない。

本題に戻ろう。この会は、乳房温存手術の際、形良くきれいに乳房を温存するためには、どのように皮フを切るか?がんを含め乳腺組織や脂肪をどうとるか?部分切除のあとがへこんだり変形したりしないようにするにはどのような工夫をすべきか?など、手術手技、手術のやり方に関する議論の場であるが、お集まりのどの先生もその道のベテランであり、それなりに経験、工夫、こだわりがあるのでなかなか結論のでない、ホットな話し合いの場になっている。矢形先生のもくろみは、将来、若い先生達も含め、外科医が習得すべき工夫や手技を全国規模で広めていこうと考えているらしい。 さらに乳癌学会がらみの研究会や本の出版なども視野に入れているというので、矢形先生の目指すモノ、この矢形の会の役割は、将来の日本の乳がん診療のレベルアップに多大な貢献をしてくれるはずである。

自分で言うのはおこがましいが、矢形先生はずいぶん私の考え方を買ってくれており、もう10年以上前から温存乳房の美的なできあがりにこだわっていたことを今も評価してくれる。県のがんセンターのトップとしての立場もあったし、20年も乳腺の外科ばかりを専門にやっていれば、それなりに自覚も自信もこだわりもある、多くの後輩達にも指導をしてきた手術のポリシーは未だに揺るぎはしないが、外科医としては手術の腕や考え方を、他人から評価される事はとても嬉しい。

この矢形の会に参加をする度に思うことがある。外科医、とくに乳腺外科医は今後、どんどん仕事がなくなる、つまり「切って取る」仕事はさらに減ってくるということ・・・言い方が変であるが、乳がんの手術はますます小さくなり、全身の薬の治療とのかねあいによっては、切らなくていい時代がもうすぐそこまでやってきている。下手をすると乳腺外科医が切らなくても、ちょいとした町のクリニックで部分切除がすんでしまい、わざわざ専門病院の乳腺専門外科医のところで手術を受ける必要がなくなるかもしれない。つまり乳腺外科医が腕を振るえるシーンが将来いよいよ減りそうなのだから、乳腺外科医が自分たちのプライオリテイを保ちながら将来生き残って行くには、やはり専門外科医としての質的なレベルアップをしなくてはならない。乳がんの手術自体が、すでに生命予後に寄与するモノではなく、局所の根治性とQOLを向上させる医療行為に過ぎないとすれば、温存乳房をよりきれいに美しく保つための、美的な手術感覚、形成外科(的)手段を、乳腺の外科医達が自分のモノにしていくことは、けっして無駄なことではなく、むしろ必須とも言えよう。

「私はこの病院であの先生の乳房温存手術を受けたんだけど、創がものすごくきれいで乳房の形も格好がいいの・・ほら見て・・」乳がんの患者さん達の間で、こういう評判になるような乳腺外科医こそが、将来乳がん医者として必要とされるのであろう。これから日本の乳がん医療を背負って立つ若い先生達には、是非ここを目指して欲しいと思う。

ある有名な内科の先生の言葉を借りれば、「メスの刃先に魂を・・・なんていう、時代錯誤の古〜〜いお偉〜〜い先生の特別講演に感動している外科医が多いが、あいつらバッカじゃなかろか・・・もうそういう時代じゃないだろう・・・だから外科医はおつむが弱いって言われるんだ」・・その通りだと思う。メスに魂なんぞ込めなくていいから、とっとと自分の手術の美的センスを磨き、患者さんがためらうことなく温泉に入れるような温存手術をしてあげることだね・・・

乳がんの手術のことを話題にするとキリがなさそうなので、あるエピソードを最後にこの後を終わらせてもらうことにする。
私は1983年に13人の仲間と共に、千葉大学の旧第一外科に入局した。その同期入局のうちの一人が、まだ一般外科医としての研修の最中で外病院の出張医の時、出張3年目くらいだったろうか? 突然、一般外科に見切りを付けて美容整形外科医になりたい・・と、新橋にある有名な美容整形十○外科病院に就職した。そのときの彼の話が、未だに忘れられない。

美容外科十○病院の採用の面接の時は、まず応接室に通されて少し普通の話をしたあと、その面談医は用事があるからと席をはずしたが、待っている間に部屋の棚においてある花瓶の絵をスケッチするように指示していったという。彼の採用試験はその「花瓶の絵を描くこと」だったらしい。同期の言葉、「美容外科なんてさ、一般外科医がそれなりに外科の初歩のノウハウさえ知っていれば誰だって出来るのさ・・要は、あとは美的センスの問題だよ・・」

美容外科と腫瘍外科をごっちゃにしてはいけないが、こと手術、メスをふるうことに関してはどちらも同じ、きれいな創できれいに治す・・美的なできあがりにこだわれない外科医には、外科医としての資格はない。特に乳腺を専門にする外科医は美的センスは必須である。・・・それにしても、センスのない奴がやたら多いよ・・


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