医語よろしく
2008年1月〜
2008.9.10
ふつうの人(一般人)の感覚
乳がんの治療を受けた有名な芸能人が、自らテレビCMに出演し乳がん検診の大切さを世に訴えているが、画像検診による早期発見により命に関わる重大な病気になる前に乳がんを完治できることに加えて、今ではしこりの周りを部分的に切るだけで、乳房を全部とらずに手術が完了する温存療法も定着しており、一時代前と比べて、乳がんに関する一般の人の意識も、乳がんの診断も治療も格段の進歩を遂げている事を感じる。

今から10年くらい前の事である。ある乳がん関連の学会々場で、面白い事件が起きた。医学関連の学会場ではそれぞれのセッション(同じ内容の発表演題をいくつか集めてミーテイングの単位としている)が始まる前に、会場の案内係の女性がマイクでアナウンスをする。いわゆるウグイス嬢であるが、この娘(こ)たちは、各学会のイベントサービスを請け負う会社のスタッフであり、特に医療関係の特別な知識はない普通の娘さんである。

『つづきまして、セッション8,「乳房温存療法」です。座長の○△医療センター ◇□先生、よろしくお願いします。』・・・という案内であるが、若い女性のきれいな声で、「セッション8、ちぶさおんぞんりょうほうです・・」と会場中に響き渡ったのである。数百人が入っていた会場は一瞬静まりかえり、数秒してから、ざわざわにやにやがやがやごそごそと妙な雰囲気につつまれた。呼ばれた座長の◇□先生も、目を◇■させて、なんだか出にくそうに座長席に向かい、居心地悪そうに台上で着席し、落ち着かないままセッション8の開会の挨拶をし始めた。

会場内は、「ちぶさ温存?だとお?ありゃ、にゅうぼう温存と読むんじゃい!アホか?あの娘は!、ちゃんと勉強しとけよ、だから素人は困るんだよ、あの学会イベント屋ろくな人間使ってねえな・・」の、ざわざわ〜ごそごそである。会場に居合わせた学会屋の上の方の男性スタッフが、後ろの方からスタッフ席にすっ飛んできて、「これは、にゅうぼう温存と読むんだよ・・」とこそこそとウグイス嬢をしかっている、が、マイクがONなので会場中に聞こえている。

しかし・・である。そのざわざわ〜ごそごその最中、ぼくは複雑なおももちで居た。仕方ないよ、ふつうの人(一般の人)ならあれは「ちぶさ」って読むよな、けっして「にゅうぼう」などとは読みっこないよ・・僕と同じように、そのウグイス嬢に同情した先生は居なかったんだろうか・・医師を始め医療関係者は全くなんの疑いもなく「にゅうぼう」と読む単語を、一般の人は「ちぶさ」としか読まない・・その感覚のずれを感じた人が、会場の中にどのくらい居たのだろう・・・まあ、こういう学会場、医療関係者だけの集まりでは、やはり「にゅうぼう」という医学的表現をすべきであろうが、素人さんが知らずに「ちぶさ」と読んだとしてもそれを咎めることは正しくはなかろう。

温存手術で「にゅうぼう」を残します・・・と主治医が患者さんに伝えていても、患者さんにとっては、温存手術で「ちぶさ」が残ります・・・と言われた方がきっと嬉しいし、ピントくるだろう。考えてみればおそらく、そのころから僕は患者さんに話をする時に、「にゅうぼう」という言葉はけっして使わなくしている。「ちぶさ」というのは実はなんとなく抵抗があるので、「おちち」という言葉で、伝えるようにしているのだが・・・

「ちぶさ温存療法」という読み方を、読者のみなさまはどのようにお感じになったであろうか?次回は、乳房温存に関する「表現の仕方」について、また話題を提供しよう。


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