医語よろしく
2008年1月〜
2008.4.20
医療の主語は患者さん
4月からスタートした後期高齢者医療制度(長寿医療制度)に関してお役所の窓口は問い合わせや苦情で混乱しているらしい。最初は「ネーミングが悪い」から始まって、いざふたを開けてみたら、「わずかな年金から天引きするなどけしからん」とか、「保険料が増えるのではないか」とか、「保険証が届かない」だの、「これまで通りの医療が受けられるのか不安だ」とか諸々、とにかく不評である。

はたしてどういうものかと医療広域連合の作成したパンフレットを読んでみたが、細かい字でたくさんのことが書いてあり、いったい何が重要なのかがさっぱりわからない。どこだかのTV局で該当するお年寄りを集めてこのパンフレットを評価してもらうという番組があったが、案の定、中身をきちんと理解して自分の保険料を正確に計算できた方は皆無だった。中には「読む気にもならない」という意見も多く、パンフレットは何の役にも立ちそうになかった。

私に言わせれば、このパンフレットを作った担当者は、よぽど優しさに欠けるのか、もしくはとてつもなく頭が悪いかのどちらかだろう。なぜお役所のやる仕事はいつもこうなんだろうか?ユーザーフレンドリーでない、つまり使う側に立ってないから、大金を使ってもこんなくだらない役に立たない資料しか作れない。

医者の使う言葉が専門的で素人の患者さんには理解できないからもっと易しい言葉で伝えろ・・医療改革の旗印に、真っ先に「わかりやすいインフォームドコンセント」が要求された。医師として当然そうすべきと思うし、患者さんがそれを要求するのも当たり前の権利だと思う。

今はやりの「チーム医療」や「病院-診療所連携」も、ことの始まりは大病院で患者さんが増えて困るから仕事分担をしたい・・ことからスタートしたものである。これは名目だけは格好が良いが、言い方を変えた大病院の勝手な都合であり、決して患者さんサイドの視点からでたアイデアではないことを、多くの人たちは理解しているのだろうか?

どこだかのがん専門病院での話・・チーム医療をうたい乳腺外科チームは部長以下中堅ドクター研修医と多くの医師は居るが、外来での主治医は決まっていないらしく、受診の度に担当医がくるくる替わるという。「チームで診ていますから・・と言われても、いったいどの先生が私の病状に責任持ってくれているのやら・・・」と、不安げかつ不快げに、患者さんは私の医療相談をお受けになられる。まさに「チーム医療はウラを返せば責任のなすり合い」、もしくは、「『チームで診てます』は『誰も責任持って診てません』」である。

さらにその科では、乳がんの手術が終わったらとっとと患者さんを地域の開業医・診療所に戻そうと躍起になっているという。「わざわざここまで来なくても、近くのかかりつけ医で診てもらった方が良いでしょう」・・と、いかにも患者さんには好都合のように聞こえるが、内実、ただひたすら手術症例数だけを稼ぎたいため、術後の患者さんで外来が混むことを回避しようとする、ていの良い「いいとこ取り、追っ払い作戦」である。そのうち、初診の時や治療開始時に、「ここでは手術しか行いません、手術が終わったら近医・診療所に戻ってもらうことをご了解下さい」という誓約書にサインした患者さんだけが、そこで手術を受けられることになるのだろうか?マスメデイアの作成する「いい病院」リストには、ことあるごとに真っ先に名前が挙がるのだが、本当にそれで「いい」のだろうか? 命ある限り、専門の病院で最良の治療を受けたいという患者さんの気持ちには、どうやって応えているというのだろう。

医療に関わる仕事は、施す側でなく受ける側の立場に立って行なわなければなんの意味もない。つまり主語は「患者さん、診療を受ける側」のはずである。いやはや、日本の医療を推し進めるべきお役所や大病院が、これほどまで自分本位でご都合主義なことしかやれぬとは・・・嘆かわしいことである。

それにしてもあの「長寿医療制度」のパンフレット、もっとわかり易いものに、とっとと作り直した方が良い、優しさに欠けると言うより、いかにも担当者のおつむが足りないことを、さらけ出しているような気がしてならない。


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