医語よろしく
2008年1月〜
2008.2.13
がんばれ「乳がん検診」 その1
自己触診・・ってなに?
2月は、自治体の乳がん検診の年度の締め切り月なので、クリニックや検診センターは受診者であふれかえっている。そういう「乳がん早期発見」の意識の高い受診者の皆さんではあるが、「自己触診」について尋ねてみると、実に面白くて情けないくらいくだらない真実がわかってくる。

M:medical examinee (受診者) D;Doctor (検診医)

D「時々自分で触って診てますか?」
M「あまりしてません」
D「どうして診ないの?」
M「わからないから」
ほとんどの人がこういう返答である。

意地悪をしてさらに聞いてみる
D「わからないって言うけど、何がわからないの?」
M「全体がゴツゴツ凸凹しているからどれがしこりかわからない・・だからやっても仕方ないからやらないんです。。。。」
これが多くの女性が乳房の自己触診をしない、正統な理由・・・
M「乳がんの硬さってビー玉みたいなんでしょ、パチンコ玉?」
M「硬いけど痛みがあるからがんじゃないと思って・・」
M「2年に一回マンモグラフィ撮ってるから自分で診なくたって・・」
・・・こういうアホみたいな会話が続くこともある。

皆さん、こんな程度である。自己触診は何を診るものなのかをまったく理解していない。お・そ・ま・つ。。。

医療素人の一般の方は乳がんなんぞ触ったこともない。だから、乳がんはいかほど硬く触るのか知らないのだから、触ってがんを見つけろ・・という方が無理。ましてや5ミリや1センチの乳がんを見つけることこそが自己触診の目的・・なんて思われたらおお間違い。我々専門医が触診したって、そんな小さなしこりは見逃すことのほうが多いだろう。だからそんなことを素人さんに期待しているはずがない・・・つまり、毎月の自己触診はがんを見つけることが目的ではないのである。

D「じゃあさ、今日はマンモグラフィと超音波で、あなたの乳房に今現在がんのしこりがないことを保証してあげるから、今日帰ったらお風呂の中で、石けん付けて自分の指で乳房をしっかり触ってごらんよ。そこら中ごりごりして、どこかがフワフワしてて奥に芯があっても、それは、正常の脂肪や乳腺が凸凹ごりごりしているだけで、あなたの乳腺は凸凹しているけどこれは全く異常ではない・・・って理解してもらったらどうだろう? 来月また診たときに、今日と同じようにごりごり凸凹していても何も心配ないわけでしょ・・・・自己触診ってそれが毎月同じように変わりない・・って確認するだけで良いんだよ。
もし何か新しいゴリゴリが触ったらさ、これって先月なかったけど、何だろう?・・って、そうしたらすぐに病院に飛んで来なさい。そん時に、痛いのはがんじゃないから・・とか、春になったら市町村の検診受診票を送ってくるからそれ持って診察に行こう・・とか、よけいなこと考えてないで、即・・病院に行きなさい。あとは僕たち専門医に任せれば良いんだよ。
皆さんが年に一回乳がん検診に来られたとき、僕らがあれ?ここちょっと硬くてしこりっぽいけど、これいつから?って尋ねたら、さあ、全然触ったことないからわかりません・・じゃ、いかにも情けないでしょ。私は毎月触ってますから、ここの硬いのは20台からもう10年以上全然変わりません、そう言ってもらっただけでこの硬いのはがんじゃない・・って安心出来るんだよ・・そのくらい自分の乳房の状態をしっかり把握しなさいってことさ!自己触診ってそれが目的だよ。」

ここまで言うと、「全然診てません」と胸張って言い切った受診者の方 も、申し訳なさそうに「わかりました、これからそうします・・」としおらしく答えてくれる。しかし、毎日毎日、すべての受診者の方がこれである。別にこれくらいの説明は苦ではないが、どうしてこんなことを、年に一度の検診の時に診察室でわざわざ医者の口から説明しなくてはならないんだろうか?・・それがくだらないと思う。

保健師さんが自己触診のやり方を指導しているはずだ。診る側の腕を頭の後ろに上げて反対側の手で丁寧に「の」の字を書きながら乳房を触る・・・で、指導はきっとそこまでで終わっているのだろう。「の」の字の書き方って?受診者は盛んに保健師さんに尋ね、保健師さんも汗をかきかき「の」の字式自己触診方を説明する。実はそんな指の動かし方などどうでも良いのであって、いったい何を診て何を確認すればいいのか? それを誰も指導していないのではなかろうか。5ミリの硬いしこりを見つけなさい?ってか? パチンコ玉みたいな硬いのががんよ!とでも言っているんだろうか? たいていの女性は乳腺がゴリゴリして触るから、例の「診たってわからない」っていう正統な?理由で触らなくなり、そのうち何もしなくなるのが関の山の「の」の字指導・・・

ついでに鏡の前に立って、乳房の変形がないか、皮膚や乳頭の引きツレがないかを診なさい・・そんな症状(浸潤がんのサイン)が出る乳がんを見つけたからと言って、場合によってはかなりの進行状態のサインだから、決して早期発見にはつながらない。そもそも、風呂場や脱衣所に身体が写る大きな鏡がある人ならまだしも、ふだんそういう習慣がない人に、わざわざ自己検診のために、裸で鏡の前に立てったって長続きするわけがない。月に一回鏡に映しましょうって言われれば、あれ?この前はいつ写したっけ?で、結局2ヵ月あき、3ヵ月たち・・そのうち二度と鏡の前には立たなくなる。別に鏡の前でなくては自己触診がやれないわけではないのに、ついでに触診もや〜〜めた・・になるのは見え見え。

脇の下のしこりも良く触りなさいってきっと指導されているに違いない。脇の下のリンパ節の触り方って実はとっても難しいよ。第一、腋窩のリンパ節転移を触診で見つけることを指導して、乳房そのものの変化や異常を見つけることをきちんと指導出来なくてなんの意味があるんだろう・・

毎月一度、風呂の中で指に石けんを付けて滑りの良い状態で、自分の乳房の凸凹の状態を見る(前と変わりがないことを確認する、変わりがあれば即病院へ行く)・・・乳がんの自己触診はこれで必要かつ十分である。

しかし、これは受診者に対する自己触診の指導であって、受診する人はまだ「乳がんに対する意識が高い」人たちであるから、こういう人たちには説明することに意味もあるし指導する甲斐もある。問題は、検診も受けずに、当然のように自分の乳房など触ったこともない、じつに多くの女性達がいることである。

「乳房の自己触診」:こんなこと学校で義務教育中に教えてほしいと思う。どうやって触るかとか何を診るべきかなんてことは、学生のうちから教えておいてもらいたい。避妊具の使い方やSTDの講義と同時に、乳房自己触診の仕方も当たり前のように指導したらいいのに。若いときから毎月自分で診ていれば、乳房に対する意識も高まり、30になったら年に一回はマンモ受けに行こう・・とか、時々超音波でちゃんと診てもらおう・・と思うはずだ。自分の母親やおばさんが乳がんになったという若い子達は20代でも検診に来ている。ほとんどの子がいつも自分の乳房をちゃんと診て気にかけている。

何より自己触診を含む乳房に関する「意識付け」が大切なのである。
・・・・その2につづく


イベント情報
医語よろしく
HOTひといき
セカンドオピニオンのすすめ
講演録・出版記事
関連情報サイト
がん患者SS(青山) TODAY !
オンコロジストの独り言
五行歌掲示板
ピンクリボンは乳がん撲滅
運動のシンボルマークです
ブレストサービス社は
ピンクリボン運動を応援します
乳がん検診を受けましょう!
Yahoo! JAPAN
   インターネットを検索
   ブレストサービス  
        ホームページを検索
お問い合わせ リンク規定 プライバシ−ポリシ− サイトマップ