医語よろしく
2007年1月〜
2007.7.7
だいぶんまともになってきた!?
先日、大学の同期の友人から、乳がんの患者さんのことで問い合わせの電話があった。彼は県内の大きな病院の実質的な外科部長、彼の外科チームでは数人のスタッフで、乳がんの手術を年間70−80例は手がけていると言っていたが、特に乳腺が専門というわけでないので、以前から、乳がんの治療に関して疑問や聞きたいことがあると、いつも乳腺専門医の私に電話で尋ねてきていた。

今回はおよそ半年ぶりくらいになるが、彼から電話がかかってくる時は、たいてい私は車の運転中で、今回も街の中を走行中。どうやら話が長くなりそうなので車を道の端に止めて彼の電話につきあうことにした。途中、パトロール中の警察の車が、私の車の横を2−3度通り過ぎて、お巡りさんが私の顔をのぞき込んでいった。「携帯で話しながら走ったら道路交通法違反ですぐにとっつかまえるぞ」vs.「へへんだ、そんな道交法に抵触するような間抜けなこたあしねえよ、ずーっと止まって喋ってれば、文句あるまい!」てな暗黙下の火花が、パトカーのお巡りさんと携帯通話中の私との間に、バチバチ飛びかっていたことは言うまでもない。

今日はそんな話がしたいのではなくて、電話の中身の話、つまり乳がんの診療に関する相談の話である。今回は3−4人分の患者さんのことをためていたらしく、一気にたくさんのことを聞かれたが、その相談の全てが、乳がんの全身薬剤治療(くすり)の話であった。以前は手術のことも診断のことも結構尋ねられたりしたが、今回は全て「くすり」の話であったことにまず驚いた。

「この患者さんは○○な病状で、これまで▲▲の抗がん剤をやったんだけど、今すこし病状がかわって・・その後どうしたらいい?次は××という薬でいいかなあ・・」「こういう患者さんで結構薬が効いているんだけど、これいつまで続ければいい?」
ってな内容の相談である。
ひと通り数人分の患者さんの相談が終わってから、まず彼に伝えたこと・・
「結構、まともな、きちんとした治療やるようになったなあ・・」

数年前のこと、彼の病院の外科のスタッフ達相手に、最新の乳がん治療に関する話題を提供すべく勉強会の講師をした。1時間ほど講義をした後に、質問を受けつつ症例検討をしたのであるが、そのときの印象は、・・・・
正直申し訳ないけれども、標準的治療からはかけ離れた、結構いい加減で勝手な治療をしていたので、地域の重要な中核病院でまともな治療ができてないとすると、患者さん達はずいぶん不利益を被るなあ、・・・と、えらく心配をしてしまったのであるが・・

今回の電話の質問の中身に出てくる彼らの治療は、ほぼ標準的な治療にふさわしく、さらにプラスαで尋ねられる質問の内容も、専門医の私ですら頭を悩ませるような難しい質問が多かったから、思わず・・「まともな治療をするようになったなあ」と言ってしまったわけである。

2年ごとに開催されるスイスのザンクトガレンでの乳がん初期(薬物)治療のコンセンサスミーテイングの結果や、米国からの診療ガイドライン、日本のガイドラインなど、いわゆる治療の手引き、教科書に相当する標準的な治療の情報が、ずいぶん広まってきたことは間違いない。10年ひと昔というが、90年代の後半には、乳がんを専門に診ていた外科医ですら、その当時話題になり始めた海外のガイドラインやEBM(evidence based medicine )の考え方には、なかなかついて行けないところが多かった。・・しかし、それが最近では日本の多くの先生方が、特に乳腺が専門でない先生でも、診療の道しるべとして当たり前のようにこれらのガイドラインや国際会議の決めごとを利用するようになった。この同期の彼も多分に、このような治療の標準化の流れに従って現在に至ったに違いない。先週横浜で行われた乳癌学会の中でも、薬物治療ガイドラインが3年ぶりに改定になり、更に診療に役立つテキストになったことがアナウンスされて、ますます、日本全国の乳がん治療は皆に等しく確実におこなわれていくであろう。喜ばしいことである。

そうなると、彼からの相談の電話も、もうあまりかかってこなくなるのかなあ・・同期なんだから、たまには電話よこせよな・・・(なんてこっちからしたことなんか一度もないのだが・・)だいぶまともになった日本の乳がん治療に、うれし悲しの乳腺専門医からでした。


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