医語よろしく
2007年1月〜
2007.2.18
 これでいいのか?乳がん検診! パート2
前回は、マンモグラフィ検診はけっしてすべての方に万能ではなく、特に乳腺がたっぷり厚い30〜40台の若い方達の検診には、超音波検査を併用した方が確実であろうという話をした。が・・今日はその超音波検診についてのちょっと困った話をしよう・・・。

多くの自治体の検診は、当該地区の医療機関(病院診療所)にゆだねられ施設検診の形で行われている。ちょっと調査してみると、向後超音波による乳がん検診を自分のところで引き受けたいという医療機関はかなりの数あるらしいのだが、その中には「乳腺超音波検査の経験があまりない」とか「乳腺専用のプローブ(探触子:乳房に直接当てる装置)はないがこれを機会に購入したい」という医療機関も、けっして少なくなかった。

乳腺超音波の専用装置は持ってないし検査の経験もあまりない、でも検診をやらせて欲しい・・・・??本気で言ってンの?その先生・・当然その先生達は、きっと乳がんの超音波像を自分で探し出して見たことはないんだろうな・・・

私は乳腺の専門医(外科医)であるが、今、たとえば内科系の糖尿病外来をやれとか、高脂血症の患者さんの管理をせよ、など専門外の診療を頼まれても、ぜ〜〜〜ったいに引き受けない。お医者さんだから(医師免許があるから)法的になんら問題はないが、これまであまり拝見したことのない患者さんを責任もって診られる自信はないし、そんなことをしたら患者さんに失礼だと思う。
「お願いだからそういう患者さんの診療をするのは遠慮させてください」って、これって普通のお医者さんの感覚だろう・・
患者さんだって、「お願いだからそんな先生のところで診療を受けるのは遠慮させてください」だろ・・遠慮どころか、「勘弁してください、やめてください」だよ。

本来なら、何らかのトレーニングなど、ふるいを掛けてから超音波検診をする医師の資格を与えるべきであるが、どうやら自治体は超音波検診をはやくスタートさせたいため、専門医による乳腺超音波講演会を聴講すれば検診医師の資格を与えることにするらしい。

ヘエ、有名な先生の講演を一回聴いたら、がんの診断が確実に出来るだけの技量を身につけられますかねえ・・・あほくさ!・
私は医者になって2年目くらいから乳腺超音波を行ってきたが(最初は大したテキストもなく、教えてくれる人など誰もいなかったので、独学でトレーニングしたのだが、つまり患者さんが教科書である)、自信を持って独りで診断が下せるようになったのはようやく7〜8年経ってからである。医者になって25年、乳腺の専門医になった今でも、未だに判断に迷うことだってあるのに・・講演を一度聴いたきりで乳腺超音波検査の経験はあまりないというドクターがいったいどうやって、難しい症例の判断をするのだろうか。だいたいそれが難しいかどうかすら、わからないんじゃなかろうか・・

乳腺専用のプローブは乳腺と甲状腺の検査にしか使えないきわめて特殊な検査機器であるため、乳腺の検査をやらない医療機関にはその装置はない。現在すでにそれをお持ちの先生の所なら、これまでたくさんの乳腺超音波検査を経験されたはずだから、検診をお任せしてもまったく安心だろう。しかし現在専用プローブがない施設やこれから揃えようなどという医療機関は、裏を返せばこれまでは確実な画像診断が出来ていなかったのだろうから、そこの先生達の乳腺超音波検査のご経験は十分といえるだろうか?

どうも話の進み方が、自治体の検診→地域医師会にお任せ→医師会員の医療収入保全(お医者さんの収入源確保)・・・こんな構図が見えてきて仕方ないのだが・・・・これではあまりに、受診者や市民に対して失礼だろう。命を預かる検診業務を、そんないい加減な医療機関にゆだねて良いわけがない

当面安心してお任せできる医療機関を限定して選び出し、さらに、数年かかってでもドクターをトレーニングして、検診医を増やしていくという計画はないんだろうか。現時点で乳腺専用のプローブを有していない施設で検診を行うことはまず論外である。乳腺超音波検診を希望する施設の先生達から過去一年間に自らが行った乳腺超音波検査件数を自己申告してもらって、少なくとも100例(年100例って、一月に8人、週に2人の受診者の乳腺の超音波検査のペース・・これでもけっして十分とは思えないが・・)の経験がある先生方をピックアップし、当面の検診施設としてスタートさせる。それ以外で検診を希望するドクターは勉強会を年に数回受講、ないし検診センターなど乳腺超音波検査を常時多数行っている専門機関で実地研修を受けていただいて、ある程度の診断レベルになられたら、順次検診をお願いしたらどうかと思うのだが・・・

このままのプアな状況で乳腺超音波検診を見切り発車してしまったら、全く心配のない良性病変を要精密検査にして受診者の方に無用な心配をかけたり、当然乳がんを見逃す事だって十分起こりうるわけだし、ヘタをすると超音波検診そのものに対する信頼が損なわれることにもなりかねない。若い人たちへのマンモグラフィ検診の弱点をカバーするために超音波検診を始めたのは良いけど、見逃しや誤判定ばかりでは安心して受診できない。・・などということにならなければいいが・・・これで良いのか、乳がん検診!

追)開業している先生の中には、超音波診断を正確に行っていただける先生方も数多くいます。実際にはとてもたくさんの受診者の方がおられますので、その先生達には是非お手伝いしてもらいたいものです。

**専用プローブも持たずろくに経験もないのに乳がん検診に名乗りを上げようとしている先生方へ**
乳腺超音波検診は、検査そのものが簡便に出来るからといってけっして診断が容易なわけではありません。乳がんの画像診断を甘く見ないでください。是非十分トレーニングをお受けになってから、検診を行ってください。

以上、呆れてモノをいっぱい言ってしまったお怒りの乳腺専門医からでした。


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