医語よろしく
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■2006年1月〜
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2006.10.27
まだそんなこと言ってンの?
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日本がん治療学会というがん医療に携わる医師の学会中の、大腸がんの化学療法に関する夕方の教育セッションでの出来事・・・
欧米からの2人の先生の特別講演。一人目の外科医は、「大腸がんの手術は最低限の範囲のリンパ節郭清をすれば十分であり、日本の外科医がやるような事細かな徹底的なリンパ節切除は必要ないだろう」という話、もう一人は腫瘍内科医で「術後にしかるべき(オキザリプラチンなど世界的に評価されている)抗がん剤を使って、予防的にがんをたたく事が生存に寄与する」という話をしてくれた。
私には、この外人のドクター達の話は、とても理解しやすく内容的にも大いに賛同・納得できる話だったが、その後に始まったフロアの日本の医師を含めた質疑応答・討論内容が、お粗末きわまりないぶっ飛びモンだった。
結構偉そうな口ぶりの日本の外科医の先生がフロアから発言した。私は専門科目が乳がんなので大腸がん領域の高名な先生方をほとんど存じないが、その先生に対する座長の言葉使いや会場の雰囲気が、いかにもこのおぢさんが、学会でも幅をきかせている大腸がん治療の大御所であることを、十分物語っていたのだが。
大御所先生いわく、「大腸がんの治療の大原則は手術。きれいに取りきる手術こそが何より最善の治療。日本の外科医の腕は世界一だ。それをないがしろにしてはいかん・・。それに、オキザリプラチンのような良い薬を術後すぐに使ってしまったら、もし再発をした時にいったい何を使うんだ?欧米と違って日本で使える抗がん剤の種類は限られているので、オキザリみたいな薬はやはり、再発してからの治療のため取っておくべきだろう」
聡明な読者の皆さんは、この後私がどのようなコメントをするか既に十分おわかりだろうが・・・
いまだにそんなこと言ってンの? 仮に百歩譲って日本の外科医の腕が世界一だとしても、なお取りきれない微小ながんが将来局所再発を起こし、肝臓や肺への遠隔転移を生ずることは、致し方ないことだろう。それは外科医の腕で防げるものではないし、外科医の責任でもない。それを防ぎ、再発を抑え、ひいては大腸がんを「治癒」させるのが、術後の薬物療法の最大の目的じゃないの?
再発しちゃったらどんな良い薬を使ったって治しにくいし、現実的に治らないじゃん。つまり再発したら「治癒」はむつかしんだろ、だったら、「治せる」可能性が一番高い「術後」に、効果が一番高い抗がん剤に治療の主役をバトンタッチしようぜ・・・って、どうして思わないんだろうか?
外科医がカバーしきれない範囲を薬の治療にお任せするのは、当然の流れであり、それにブレーキを掛けるような外科医の傲慢な発想はむしろ罪に等しいかもしれない。
手術が万能、外科医ががん治療の主役だと、いつまでも思ってるから、必要な薬物療法がちっとも日本で浸透しない、結果として薬で救える多くの日本の大腸がん患者さんを、みすみす見殺し(発言が適切でないかも知れません、すみません)にすることになるんだろ!?
大御所先生のぶっ飛び発言に、首を横に振りながら嘆いている私のそばでは、しかし、大きくうなずきながらそうだソウダ!その通り、手術をおろそかにして、一番良い抗がん剤から使ってしまうようなやり方にはとうてい賛同できん・・・大御所発言を頼もしいと思う外科医が、じつは会場のほとんどを占めていたに違いない。
「まだそんなこと言ってんの?」・・とっとと、外科医の仕事の限界に気づけよ!・・
PS:ちなみに私は、紛れもなく外科医。最近手術はしていないので元外科医といった方が良いかもしれない。ルーツは同じ乳腺外科医がどうして身内の消化器外科医をここまでボロくそに言うのかと、不思議に思う読者もいるかも知れない。
少なくとも乳がん手術の目的は「治癒」ではなく、局所のQOLを向上させることである。手術はどんどん縮小化し、治療の主体が「メスから薬物」に、見事にシフトしていった乳がん領域で仕事をすればするほど、外科医の仕事の限界は何の抵抗もなく理解できるのだけれども・・・
とはいうものの、私は手術の腕なら誰にも負けない、どの乳腺外科医より上手にきれいにやれる自信はある。己の手術の腕を自慢げに吹聴するのが「外科医」の悲しい性(さが)らしい・・・ってことは、日本のがん関連学会は「性」ばっかし・・ってことか?!
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