医語よろしく
2005年1月〜6月
2005.5.27
 乳房温存療法に初指針?????・・・
誤解を招かないように、記事をそのまま掲載しよう。まずは報道記事をお読みいただきたい。

乳房温存療法に初指針厚労省研究班
腫瘍4センチまで 専門医・技師配置を要求
朝日新聞 記事より

 乳がんの手術で乳房を残す「乳房温存療法」について、厚労省研究班は初の指針をまとめた。温存療法は現在、乳がん手術の第1位の選択肢だが、施設により実施率が大きく異なる、放射線治療医など専門医抜きで実施している施設がある、などの問題を抱える。指針の徹底で、施設間格差を縮め、全体の水準向上を目指す。

 乳がんは日本人女性が最も多くかかるがんで、毎年約3万5千人が新たに患者となっている。腫瘍の周りを切りすぎると乳房の形が悪くなりQOL(生活の質)が下がるが、切除が不十分だと再発率が高くなる。日本乳癌学会によると、温存療法は80年代後半から広まり、03年に全摘手術を抜いた。

 指針では、切除後も乳房の形を大きく損なわないなら腫瘍の大きさが4センチまで温存療法が許されるとした。また腫瘍が複数あっても、近くに2つある場合で安全性が保てると判断されれば、温存の適応とした。

 温存療法の場合、切除後、残された乳房に放射線を当てて再発を防ぐ。指針では、日本放射線腫瘍学会に属する医師や技師が少なくとも1人、勤務していることを実施施設に求めた。手術前に抗がん剤を使い、腫瘍を縮小することも推奨した。

 温存療法に関しては、3センチまでの腫瘍を適応とするなどとした乳癌学会の99年の指針があるが、医療の進歩を反映するとともに、問題点の解消を狙った。

 新指針をまとめた霞富士雄・癌研有明病院乳腺科部長は「実際に温存療法の適応となるのは60%台だろう。指針は強制ではないが、科学的根拠に基づいた診療をして欲しい」と話す。指針は医師向けと患者向けがある。それぞれ各1部を乳癌学会の認定医に配り、近く出版もする予定だ。


 記事はそのまま掲載した。が・・・いくつかこの報道の仕方には問題点がありそうなので、お話ししよう。

安全性が確保されれば・・との「安全性」とは何を基準にしているのか??再発率を言っているのであればその数字をはっきり示すべきであろう。またその数字を持って、何が安全なのか・・きちんと示すべきである。あやふやな表現で指針とするにはあまりに非科学的であろう。

また、乳房温存治療は乳腺専門医と放射線治療専門医がいるところでないと、施行してはならないかのような表現であるが、現実的に今のこのたくさんの乳がん新患の患者さんたちを、この条件を満たした病院数ですべて面倒見切れるとでも思っているのだろうか?絶対不可能である。乳腺専門医(外科に限定)プラス放射線治療専門医の条件をクリアできる病院は、おそらく日本に200施設もあるまい。そこでしか乳房温存療法をやるな、というのはむちゃくちゃな話である。

実際には専門医でなくても温存手術に慣れている優秀な外科医もたくさんいるし、かつ自分の病院に放射線治療部がなくても、外部の放射線治療施設と上手にタイアップして、放射線併用の温存療法をうまくやっている施設もたくさんある。むしろ手術件数で言えば、そういう形の温存治療を受けた患者さんの方が絶対に多いはずである。しかし・・新指標に従えば、そう言うところで温存治療はやってはならないことになる。

原則的には専門医がいるところで行うことが望ましい・・なんて言う体裁を取るだけの文章なら、現実的でないので、記載しない方が良い。

しかしまじめにそう言う指導をしたいというのであれば、そもそも、指針だとかガイドラインだとか言うのは、こういうやり方でルールを守ってくれれば、どこの病院で誰が治療をしても患者さんにはある決められた一定以上の治療成績が担保されますよ・・・というモノではないのだろうか??

病院施設を限定したり、治療に参加できるスタッフの資格を条件付けたりすることだけで、指標だの治療指針だのと言うのはナンセンスだろう。そんなことで日本全国のすべての地域で、患者さんが安心して乳がんの治療を受けられるようになるとは、とうてい思えない。

具体的な指針の文章を直接見ているわけではないが、手に入り次第確認してみようと思う、この報道の伝えるままの指針であれば、上記のような問題点が危惧されてならない。




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