医語よろしく
2005年1月〜6月
2005.5.27
 ○○病院△△先生 御侍史
検診センターやクリニックに、乳房のしこりの検査に来られて、「がん」の診断がついて、それから治療先の病院へ患者さんをご紹介したときの話である。

「○○病院の乳腺科の部長の△△先生はとっても良い先生で、話もよく聞いてくれるし、しっかり治してくれるよ、だからその先生宛にお手紙書きますね。病院に電話をしてその先生の外来日に予約を入れてから受診してください・・・」

我々からお墨付きで推薦された病院の先生だから、患者さんも安心して、希望を持って受診したい・・・のであるが、いざ病院の窓口に電話をすると・・・「当○○病院の乳腺科は主治医制をとっておりませんので、チームの先生が順番に外来の初診患者さんを担当します、△△先生がごらんになるかどうかわかりません」と、それはそれは、まあ、つれない返事・・

△△先生は乳腺科の長だし、他のスタッフよりもたくさん外来に出ているだろうから、だからうまくいけば診てもらえるかもしれない・・はかない期待を胸に受診するモノの、やっぱりその先生には診てもらえず、「私は△△先生宛に紹介状をもらったのだから、せめてご挨拶でも・・」と外来のナースに懇願してもついぞ△△先生にお目にかかることは許されず・・数日後に、紹介状を書いた我々のところに再度来られて、「△△先生に診てもらえなかった。代わりに大学出たてのような若〜〜い先生が、なんだかしょっちゅう隣の部屋の上の先生にお伺いたてながら、頼りなげに診てくれた」と泣きながら(半分怒りながら)訴える。・・・

「その病院の乳腺科はチームで診てくれているから、入院したらその部長の△△先生がすべて指示を出して、手術にも立ち会ってくれるから、安心して治療を受けなさい」なんて慰めはするモノの、果たして、△△先生は自分宛に強烈なラブレターばりの紹介状をもらった患者さんであることなど意にも介せず、ひょっとしたら会議に出席するからと手術にも立ち会わず・・なのかもしれない。でも△△先生に診てもらえなかった患者さんの恨みを少しでもはらす?ためには、知りもしない○○病院の診療スタイルや(身勝手な?)病院の事情を、こちらに勝手に良いように解釈してお伝えするしか仕方がないのである。

最近特にこういう話がやたらに多い。特に大病院に紹介するとこんなことは、日常茶飯事である。チーム医療の話を先月のコラムで書いたが、これもチーム医療の持つ弱点のひとつかもしれない。あの病院は乳腺のスタッフがチームを組んでチーム医療をしてくれるから・・と、都内の某病院を紹介して欲しいと言ってきた患者さんにも、裏を返せば主治医不在で受診のたんびにドクターが代わるかもしれないよ・・とご忠告申し上げつつ、言われるがままにその病院宛に紹介状を書くこともなくはないのだが・・・

せっかく△△先生宛に診療依頼の紹介状を書いても、全然違う先生が担当して、ついぞ大事に診てくれないのであれば、もうその先生宛に紹介状を書くことはヤメにしよう・・と思ってしまう。こちらの意図と関係ない診療体制で、患者さんを満足させてくれないような病院には、最近では、だれそれ先生という特定のドクター宛にしない紹介状を書くことにしている。つまり「なんとか病院乳腺科、外来担当先生 宛」にする。・・・しっかし、それではいかにも味気ないではないか・・

ある患者さんがクリニックに来て、ぽつりと話したことがある。「大きな病院は、名前も売れてよく雑誌のランキングにも出てくるし、設備も立派なのがあって、私は、病気は病院が治してくれるものだと思ってましたから、あそこの大病院なら大丈夫と思ってたんです。でも、乳がんが再発してとっても怖くなって不安になったときに、誰も私を支えてくれるひとはいませんでした。先生方は外来日のたんびにくるくる替わって、いったい誰が責任もって私を診てくれているんだろうって感じだし、看護婦さんも忙しく走り回っているから話しかけにくいし、事務の電話応対なんて、マニュアル通りみたいな扱いされるんですよ。病気は病院が治してくれるんじゃなかったですね。そこにいる先生方や、看護婦さんや事務の人など、1人1人の皆さんの心が、私を治してくれるって事がようやくわかりました。もうあそこの病院に戻りたくはありません・・・」

我々紹介する立場の人間だって、自分や身内だったら絶対この先生に診てもらう・・っていう先生宛に紹介状を書いても、「病院;組織」で診る・・っていうんだから、こりゃ患者さんたちに、こころ不在の医療と思われても仕方ないのかもしれない。

しかし、これは病院のシステムだけの問題でもなさそうである。当の、その科の部長(トップ)の考え方も大いに原因しているようにに思えてならない。医者仲間の裏話、漏らしちゃおっか・・・その部長先生の奥さんが具合が悪くて、別のある大病院を受診する事になれば、まず普通の患者さんなら何週間も待つことになる初診外来を、なんの問題もなく連絡した翌日に診察できるようにしてくれて、当然そこの一番偉い先生が、朝の一番に直々に診察をすることになっている・・・(たいていそうである)、

「イヤ俺はぜったい、そんなことはしていない」「他の患者さんと同じくまず電話予約して初診診察日を何週間待とうが、そこの指示通りに診察を受けさせる」とか、「そこの部長先生宛に紹介状書いたけど、病院の都合で若いぺっぺの研修医が診ることになってもそれはそこの病院の都合だから文句言わないように・・」って、奥さんにきちんと病院の"都合"を守るように言って聞かせている・・っていう殊勝なドクターがいたら、足首より下まで頭を下げてごめんなさいって謝りますよ・・そんなことぜったいしねえだろ?!・・・

だからさあ、せめて自分宛に紹介状を持ってきた患者さんくらい、丁寧に対応して、ここで治療を受けられれば満足って思ってもらえる工夫をしたらどうなんじゃい。じゃあそんな紹介状をもらってきた患者さんにどう対応すればいいのか??って?・・それは、声の掛けようひとつでしょう。

「あ、なんとかクリニックのMM先生からですね・・あなたをご紹介頂いたことはお話聞いてましたよ(実際、聞いてなくなって良いんである)僕は今日は他の患者さんを診なくてはならないので、今日はうちの若手の最高に優秀な(実際、優秀でなくたっていいんである、上医から優秀と勧められた医者なら患者さんにとっては十分優秀なんだから)研修医の先生に入院予約や必要な検査のスケジュールを立ててもらいましょう。あとでカルテ見ておきます(実際、見なくたって良いんである)。入院までしばらく時間がありますが、もしご不安になったり、お聞きになりたいことがあれば僕はいつもいますから(いなくたって良いんである)、いつでも尋ねてください。もし僕が手が空いてなくても、他の先生でもみんな優秀な先生たちでいつも連絡を取りあってますから(実際取らなくたって良いんである、カルテを見ればたいていの医療連絡は自動的に取れるのである)、大丈夫です。また入院したら病棟でお会いしましょう。手術の時はお手伝いしますから・・・」・・って言ってあげれば(これだけ話すのに1分もかかるまい)・・△△先生に診てもらえなかったって、あとで愚痴をこぼす患者さんはまずいなくなるだろう。

そればかりか、自信を持って勧めて頂いた先生だけのことはある、とっても好感が持てて信頼できる先生で、良かったです・・・この先生に診てもらえるなら安心だ・・・って実際診察を受けてもいないのに、好感度倍増、その先生の評判はますますあがることだろう。

やっぱし、これからも、患者さんの診療をお願いするときには、心が通う紹介状を持たせてあげたい。外来(にたまたま出てた)担当医師宛の紹介状じゃあ、病院に患者さんを送り込んだっていうだけで、なんの安心感も与えてあげられないんじゃないか。これからは患者さんひとりひとりに対する個別医療の時代だ・・って言ってるはなから、ろくに信頼関係の連絡網の伴わない段階で「チーム医療」の名のもとに、当該の患者さんが満足な診療を受けられなかったと感じるような体制を組んでいるのであれば、「チーム医療」も名前だけ、「チーム医療の名を借りた、たらい回し医療」にすぎない。
患者さんをよろしく頼むよ・・○○病院乳腺科部長の△△先生!!




イベント情報
医語よろしく
HOTひといき
セカンドオピニオンのすすめ
講演録・出版記事
関連情報サイト
がん患者SS(青山) TODAY !
オンコロジストの独り言
五行歌掲示板
ピンクリボンは乳がん撲滅
運動のシンボルマークです
ブレストサービス社は
ピンクリボン運動を応援します
乳がん検診を受けましょう!
Yahoo! JAPAN
   インターネットを検索
   ブレストサービス  
        ホームページを検索
お問い合わせ リンク規定 プライバシ−ポリシ− サイトマップ