医語よろしく
2005年1月〜6月
2005.4.29
 DOPOS(ドポス) 医療がいちばん??
いきなり横文字でなんのことかとお思いの方も多いであろうから、まずは言葉の説明からはじめよう。

DOSはDoctor/Disease Oriented System医療
POSはPatient/Problem Oriented System医療

「DOS:ドクター主導型の医療、病気疾病をターゲットにした医療」から、「POS:患者さんサイドに立った全人的医療、病気を持っている患者さんの様々な問題を解決することを目的とする医療」へと、医療の方向が方針転換している・・・・というのであるが・・・

DOSは決してドクター(D)は患者を怒りまくって(O)診療(S)するの意味ではないが、そう言う言葉で置き換えてもなんとなく納得できてしまうから、これまでのお医者さんの立場は・・本当になさけない。

大学病院や○○センター病院など大病院は、どちらかというと「患者さんを診ないで病気ばかり見ている」といわれる。・・・「あなたみたいな症例は学会報告モノだよ、とっても珍しいから・・・」なんて言葉を平気で患者さんに言うのは、大学病院のスタッフに圧倒的に多い。人としての患者さんは目の前にはなく、病気を持った一つのケースでしかない。しかし最近は「病気」も見ないで、診察室の机の前のコンピュータの画面ばかり見ているらしいので、もっと始末に負えない。

診察は機械的に処理し、患者さんにしゃべらせる余裕を与えない。ちょっとお聞きしたいんですけど・・と患者さんが口を開こうものなら、「俺は忙しいんだ、このカルテの山が見えないのか・・俺の治療に不満があるのなら、どこにでも好きな病院に行ってしまえ、患者がひとり減ればそれだけ楽になるから」と怒り出す。

大体「自分は忙しいから」と言って、目の前の患者さんへの対応をおろそかにするような医者は、最低の医者であると考えて良い。忙しいのはあんたの都合、そんなことは患者さんにはなんら関係はないことだし、それを根拠にその患者さんを十分満足させてあげられないというのは、そんなモノは医療ではない。しかし、大病院のえら〜〜い先生の診察室では、そんな不合理が通ってしまうのである。医者の常識は世間の非常識・・・あんたは世間では普通じゃないんだよ!!

抗がん剤の治療がつらいから、なんとか良い方法を考えて欲しいと提案でもしようものなら、「あんた俺の言うこと聞かないと死ぬよ・・・ちゃんとやらないと、うちの治療成績が下がってしまうし・・」なんて話の展開は、その手の医者にはお手のものである。

しかし、治療法に関しては手抜きはなく、EBMに準拠し学術的には正しい治療を展開しようとしていることが多いので、どちらかというとDOS施設であるといわれる。

誤解のないように・・・大病院がすべて「病気」しか見ていないわけでなく、患者さん個人をひとりひとり、こころから大切にしているドクターもたくさん居る。しかし、多くの患者さんを抱えてただでさえ時間がないところに、病状が重かったり治療に手間のかかる患者さん達がどうしても集中してしまうので、患者さんに「1人のひと」として向かう姿勢がおろそかになりがち・・・と、あくまでも一般的なイメージで言っていることを理解してもらいたい。

しかしPOSだって、考え違いされているケースはたくさんある。こんな治療法もありますよと、山ほど治療法を説明し、こういう副作用も何%出ます、結果としてこんな治療成績ですが、さてこの中のどの治療法を選びますか、来週までに決めてきなさい・・・と、てんこ盛りの情報提供することだけが正しいインフォームドコンセントであると間違って理解しているおバカな医者から、目の前にポン(P)と複数の選択肢を投げつけられて、患者さんがご自分で決めかねてオタオタと(O)混乱している診察室(S)の話。

こうして患者さんに治療選択させることが、患者さん主導型の医療である、という理屈なんだろうが、これではインフォームドコンセント(説明による同意)ではなく、インフォーームド コンフュージョン (Confusion)、説明による混乱・・・にすぎない。最近やたらよく耳にするパターンである。

POSの解釈違いをしている別のパターンの医者も多い。患者さんが抗がん剤の副作用を気にしているので、なるべく副作用が出ないようにクスリの量を適当に減らしてみたり、治療効果がきちんと確認されていないクスリを、軽くてもちゃんと治療できる優秀な方法かのように患者さんに勧めるような、あたかも、僕は患者さんのサイドに立って患者さんの味方でござい・・・みたいな面をした、ぱっと見は(P)患者さんのことをよく考えているように見えるが、実は、いい加減な治療を提供している大バカ者(O)の先生(S).も、けっこう居るのでこれまた始末が悪い。

まあ、正直、公然と「僕は患者さんの側に立って・・」とか「患者さんのためを思って・・」なんて平気で口にする医者には・・ろくなやつは居ないような気がする・・・そんなことは医者の最低限のモラル、医者として当然取るべき医療スタンスであって、わざわざ口に出して言われると、かえってその医者の腹の中を疑いたくなってしまう。

さて、一方では市中の病院やクリニックレベルになると、1人1人の患者さんに向き合うという姿勢はより強くなる。したがって当該の病気だけでなく患者さん全体をケアしようとすることに、より重きを置いた治療を展開しやすい。つまりPOS的要素の強い施設といえよう。しかし前述したように、「患者さんの味方」的お医者さんはどちらかというと、治療がいい加減で、実は勉強もあまりしていないので、自分が間違った医療を展開していることすら理解できない立場の人である。

しかしながら、患者さんはそういう医者を信頼し、実は治療の満足度はきわめて高いのであるが・・・・・昔から「正義の味方」は概して「やさしい」のである。これを置き換えると、「患者さんの味方」の医者は概して「やさしい」のであるが、「やさしい」医者が必ずしも「正義の味方」とは限らない・・のである。

けばけばしい宣伝文句で不当に売り上げを伸ばしている根拠のない健康食品に走りがちな患者さんに、はっきりとNO!と言い、むやみに抗がん剤の量を減らすことは結果的には治療が不十分になって患者さんの利益にはならないことをしっかり説明し、加えて副作用を軽減する多くの手だてを提案し、頑張って一緒に治療しようと励ますことが出来て始めて、「正義の味方」になれるのである。

ここでは、医療に関しては素人さんである患者さん達に、しかるべく正しい情報を提供し、正しい方向に導いてあげねばならないプロとしての医者の役割は大きい。このときには医者は毅然と、必要なら少しばかり強い口調をもってしてでも、正しい医療が受けられるように導いてあげねばならず、ドクターoriented(DOS)の要素は少なからず残されている。これを医師主導でよろしくない医療だとは誰も思うまい。

また誤解のないように・・市中の一般病院やクリニックレベルのドクターでも、きちんとEBMを理解し、正しい医療を展開しつつ施設のフットワークの軽さを利用して、患者さん個人個人をしっかりり受け止めている尊敬すべきドクターもたくさん居るので・・お間違えなきように・・

「良医は病気を治すのではなく患者を治す」
昔からよく、こんな風に理想の医療を表現したのであるが、まさにDOSからPOSへの医療のシフトが、この理想郷を実現してくれるのであろう。

DOS施設がPOSの考え方を導入して行くのもよし、POS施設が、よりDOSの考え方を基盤にすることも必要であろう。一つだけ言っておきたいのだが、DOS施設・・・言い方がよろしくないので、元の言い方に戻そう。大学病院や○○センターなどの大病院は、チーム医療という方法を取り入れて、患者さんが安心して満足のいく治療を展開しようとする動きがある。

チーム医療とは主治医である外科医だけでなく、心療内科医、精神科医、看護師、薬剤師、理学療法士、栄養士、ソーシャルワーカーなど多くのスタッフが、それぞれのパートで患者さんに対する情報提供、サポートを役割分担することである。もちろん限られた時間で多くの患者さんをサポートするには、このような役割分担は当然必要であり有効な方法であろう。しかし、間違わないで欲しいのは「心のケアをするのは外科医の仕事ではない」とか「治療費のことで相談事を持ちかけられてもそれは俺の知ったことではない」などと、他のパートに責任をなすりつけることがチーム医療の本質ではないということである。

うまく伝わっていないかもしれないが、役割分担をすることで病院スタッフひとりひとりが、医療従事者として絶対に必要な基本的なPOSの姿勢をおろそかにしてしまうことになりかねない・・・という点を危惧するのである。つまりチーム医療という名を借りた責任逃れに・・間違ってもそちらに流れないように、POSのシステムを展開していって欲しい。

まあ、患者さんにしてみれば、DOSでもPOSでもそんなことはどうでも良いことかもしれない。要は、自分のことを真剣に大切に思ってくれる病院で、自分の目を見てきちんと向かい合ってくれる信頼できる優秀なドクターからの、安心できる満足な医療を望んでいるだけの話である。

自分としてはDOSとPOSのほどよいバランスのとれたDOPOSが一番かな・・と勝手に造語にしてタイトルを書いたのであるが・・・・・さらにいうならdoPOS医療がベストであろう。




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