医語よろしく
2004年7月〜12月
2004.11.18
 来年も検診受けた方がいいでしょうか?
乳がん検診にこられた受診者の方に、「マンモグラフィー、超音波。触診などすべて異常ないですよ」とお伝えした後、診察室を出て行かれる直前に、こういう質問をされることがよくある。「来年も受けた方がいいですか」と・・

尋ねられたお医者さんとしてはなんと答えたらいい??そりゃあ、また来年もお受けくださいって・・・ふつうはそう返事しますワなあ。イヤ来年は受けなくたっていいですよ・・・っていうだけの確たる信念と医学的根拠をお持ちのドクターなら、「来年受けなくていい」とお返事するのだろうが・・おそらくそんな大胆発言をする医師はまず今の乳腺専門医の中にもおるまい。

唯一、受診された方のお年が70歳過ぎとかで、マンモグラフィーも下の写真(左)のように、ほとんど乳腺の白い影が見られず脂肪に置き換わったような方なら、今回しこりの影が見つからなければ、あと数年は検診を受けなくてもかまわないかもしれないけれども、それは極めて特殊なケース。逆に右の写真のように、まだ乳腺がたっぷり白い影を映しているようなお若い方の場合は、万が一その白い乳腺の陰に隠れて小さな乳がんが育っているのに発見できていないのかもしれないので、来年検診を受けなくていいなんて、口が裂けても言えない。

そもそも、検診否定派、検診無用論者の先生は、来年どころか、今日こうして無症状のまま検診を受けに来たことそのものを否定するであろうから、来年受けるだの受けないだのの議論の前に、まず本日の受診を頭ごなしに怒鳴りつけられるだろう。もっともそんなドクターのところには、検診を受けに行くことはないはずなので、そもそも検診を受けに行って怒られる心配はごじゃりません。

さて、来年も検診を受けましょう・・・と言われても、市町村の検診は50歳以上の方の検診は2年に一回のマンモグラフィー撮影・・となっているところがほとんど。毎年受けられないじゃん・・・って不思議に思われるかもしれないので、そのことについてコメント。

下の図を見て欲しい。乳がんは理論的にはがんが発生(スタート)してから、とってもゆっくり大きくなって、約10年かかってようやく1センチの塊になる・・とされている。(これはあくまでも理論的な発育スピードであって、個々人によって差があることはご了解いただきたい)。でも10年たって、1センチの塊になってからは、今度は別にゆっくり直線的にではなくて、指数関数的に大きくなり増殖のカーブが徐々にきつくなる。ということは、ある程度の塊になれば、それから先は大きくなるスピードも速くなりますよ・・ってこと。ただしそれが1センチのところで、カーブが上向き始めるのかそれよりもう数年後からそうなってくるのかは、患者さんによって異なる現象であろう。でもいずれにせよ、大きくなるスピードは10年を超えたあたりから、そうそうゆっくりでもなくなる・・ということである。

今、仮に50歳で1センチの乳がんをお持ちの患者さんがいたとしよう。その方は実は乳がんが発生したのは40歳の時。スタートから、5年、6年くらいまでは、なんらしこりとしての存在感を示さず、たいした大きさではないので、ここでいくら毎年検査を受けたからといって、早期発見につながることもない。小さすぎて発見できないのだから・・

ところが8年目をすぎるくらいになると、そろそろ数ミリのそれなりの塊になってくるので、ここは画像の検査で頑張ればなんとか小さな乳がんを見つけ甲斐のあるところである。ちょうど10年目で1センチの塊になったところでしっぽを捕まえられれば、それでも2センチ以下の早期乳がんが発見されたわけだから、万々歳である。

でもそこから先はというと・・・ちょっと角度が付いて、大きくなるスピードが速くなる。10年目の1センチのしこりが万が一にも見つけられなかったときに、その2年後のマンモグラフィー検査では、すでに2センチを超えるしこりを発見することになる。10年を少しすぎたあたりの検診で、万一その時点でがんを発見できなければ、それから2年後の検査では・・・・ちょいと立派なしこりになってしまっていることになる。

だから、こんなカーブを見せられると、やっぱし検診は2年ごとでなくて、毎年こまめに受けた方がよさそうだ・・Do you understand?

今の例は、たまたま50歳で1センチに育ったがんを持っている患者さんを想定しただけの話。がんは何歳の時点で発生してもおかしくないので、そうなると常識的には、50歳の乳がん発生のピークの年齢を中心にして、40歳台、50歳台の女性は毎年検診をお受けになるのが、もっとも安全ではなかろうか・・

市町村の2年に一回検診は、集団としての受診者の利益(早期乳がんを発見し集団全体の長生きにつながること)と不利益(検査費用、検査に費やす時間、検診施設場所に行く手間、など)を天秤にかけたときに、だいたい2年に一回撮影をしておけば、一番、無駄なく効率よくがんの発見に寄与するであろうという理屈に立っている。(決して完璧な結果が出ずとも、集団として考えればこれでいいんだそうだが・・???である)

胃がんや子宮がん検診、肺がん結核検診は、毎年検診を受けられるのに、なぜ乳がんは2年に一回か??どうもよくわからない。乳がんはゆっくりがんだから、ってお上の面々はなめてかかっているらしいが、先程の10年すぎたあたりからの傾きが強くなる発育カーブを見ても、それでも2年間隔でいいと言い張るのかなあ・・

まあ、金とやる気があれば毎年検診ができるはず。ということで2年間隔検診は現在の予算のない検診体制の悪しき産物のため、やっぱり毎年検診が勧められるという結論になる。2年に1回しか市町村が金銭的にサポートしてくれないだけで、自由診療でも保険証を使ってでも、自分で払う気にさえなればいつでも画像検診は可能である。

というお話で、
「来年も検診を受けた方がいいですか」と聞かれたら・・やっぱし、「ええ、是非お受けになった方がいいですよ」
と答えるしかない、診察室の現場でした。

「なぜですか?」
と、さらに尋ねてくる強者の受診者がいれば、その方を説得するためにはこれだけの説明が必要となると・・専門医は絶対的に足りない。だから、こんなこといちいち尋ねないで、必ず来年も検診を受けうることを当たり前にしてくださいませんか??

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