医語よろしく
2004年7月〜12月
2004.10.22
 「わからない」医者・・・・・
「先生、私、死んじゃうんでしょう、もうだめだよね」がんの患者さんのお世話をしていると、このような患者さんの声は残念ながらよく耳にする。

そんなとき医者はどう応ずるか?
医師A「そんなこと僕に聞いたって、神様じゃないんだから、人の寿命なんてわからないよ」
医師B「がっはっは・・なに泣きごと言ってんの?こんなもんじゃ死ぬわけないじゃん。天国の神様こんなんじゃ呼んでくれないよ」
医師C「大丈夫・・僕に任せなさい、神様なんかにあなたを渡したりしないから・・一緒にがんばろうよ」
こんな風に神様のお名前は、医者の口から結構よく出てくるのであるが「神様」の登場のさせ方が云々というコラムでもないので、とっとと本題に入ろう。

患者さんはこの3人の医者の返答を聞いて、どの医者が自分の主治医として好ましいと思うだろう・・

順番違えてコメントしよう。
医師B・・いかにも頼もしい、豪快な町のお医者さんタイプである。ひょっとしたら、カラ元気で学術的にはあんまし根拠はないが、何となく元気をくれそうな感じはする。泣きべそを書いていた患者さんも半分引きつって、ちょっとだけ頬がゆるみそうな返事だ。こういう返答の後、次々と難しそうなややこしそうな患者さんとのやりとりは、決して続けようと思ってはならない・・ここでこの話ヤメ・・にしないと、こういういわゆる根っこのなさそうな医者は、次々とぼろが出てしまうに違いない・・・でも、医者のキャラクターとしては、必要な要素を持ち合わせた医師であろう。

医者C・・・ま,答えとしては超優等生的お返事。でも言っている本人は内心ビクビクの冷や冷やドキドキもんのお返事なのである。今時のご時世、すべての患者さんが悪意の固まりで医療行為をとらえているわけではないが、「あのとき先生治るって言ったじゃない」・・とか、「大丈夫だっていったはずだ」なんて、予期せぬ結果に終わったときに、後々患者さんからクレームをつけられやしないかと・・・しかし、医者の使命たるや、目の前の患者さんを救うためになんとか勇気付けようと、なんとしてでも生きる希望を与えてあげようと、こんな綱渡り的キザっちいお返事で、患者さんに力を授けようとするのである。

正直なところ、後々よろしくない結果に終わったときでも患者さんから、「先生あのとき治るって言ってくれたでしょう。私、そんなこと信じようと思わなかったけど、あのときそういって元気付けられて、今まで頑張らせてもらえたことを、先生には本当に感謝しています。」・・なんて言われた日にゃあ・・あーーた、医者冥利に尽きるって言うか、でも心の中で「力になれなくてごめんね」と頭を下げて泣きたくなるような、ウレシかなしい医者がCタイプなんである。

さて、問題は医者A・・誰が聞いたって、こんな返事をする医者に自分の命を任せようなんて患者さんは、いそうもないと思うだろう・・・・がしかし、このタイプの医者は実は、圧倒的に多いのである。特に最近は・・わからないものはわからないと言え、中途半端に知ったかぶりして後々問題になるようなことは口にしてはならないので、わからないものはわからない、知らないモノは知らないと、はっきり言いなさい・・・と教わったんだか、それが医者の役目だと勝手に思ってんだかわからぬが、そんな医者がてんこ盛りにたくさんになってしまってきているのである。たいへん・・寂しい診察室に思えてならない。

検診センターで乳がんの診断がついて、ある治療機関に紹介された患者さん・・
「私のこのしこり、いったいいつから出来たんですか?私は毎年検診受けていたのに・・」
「そんなことわからないよ、神様じゃないんだから」(またも神様登場)
面倒なことに巻き込まれるような返答はしたくないし、そんなことに俺が責任を感じる筋合いもさらさらないので、わからないと言っておくのが一番手っ取り早い・・と医者は瞬時に判断するのであろう。

さらに話は続く・・
「手術までに2ヶ月もまだ予定が立たないって言うけど、そんなに待ってて私のがんは大丈夫なんですか?」
「大丈夫、それは絶対に大丈夫だから安心して待ってなさい」
「だっていつ出来たか、わからないって言ってるハナから2ヶ月待っても大丈夫なんて、なんの根拠でそんなこと言えるんですか」
「・・・」
患者さんの言うとおりである。ごもっともな、見事な理論展開である。医者の負け〜〜〜完全に敗北。

だからあ・・・「わからない」って言葉は、医者の口からは絶対出てはならないのである。わからないという言葉は、医者の責任逃れと自己防衛をしているだけで、何ら患者さんのためにはならない言葉だということに、多くの医者は気づいていないんだろうか?

「よくわからないけど、ここに白い影が映っているから、ちょっと怪しい。でもよくわからないけど、まあ、大丈夫だと思うよ」アホか・・・よくわからんのだったら、言うな!!よくわからんけど大丈夫なんて言う、そんな日本語通じるか!?!小学校の国語の成績悪かったんじゃないの?!そんなこと言われた患者さんは不安でたまらんだろう。医療不信に陥ってしまいそうな返答である。しかし、悲しいかな、このような話を展開する医者が、僕の周りを見回しただけでも・・・・・・ごろごろ・・・いる。

なにも、知ったかぶりをして、適当にわかったふりをした返答をしろといっているわけではない。そんなことをしたら、かえって患者さんに不利益を生じてしまうので、そのあたりの「押し引き」具合は絶妙にこなさねばならない。

本当に、全くわからないのであれば、「ごめんなさい、僕にはあまり経験がないので、いい加減な返答はかえってあなたに迷惑をかけることになるから、やめておきます。しかし、知り合いのその方面の専門の先生がいますから、その先生に尋ねてみましょう。紹介状をお書きします・・(とか後で電話で聞いておきます)」と、返答をしたらどうだろう。患者さんはさほど不安にもならずに、「わからない」ことを察してくれるんではないだろうか・・少なくとも「僕にはわからない=俺に責任をかぶせないでくれ」と突っぱねるよりは、遙かに優しい医療に違いないだろう。

最近、僕のところに医療相談にこられた患者さん数人がたて続けに、医者の「わからない」発言に、悩み混乱しておられたので、このようなコメントをさせてもらった。皆様はいかがお思いでしょうか?

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