医語よろしく
2004年7月〜12月
2004.6.17
 医療はサービス・・患者様?
 「患者様」・・・どうもしっくり来ない呼び方である。違和感どころか私は嫌悪感すら覚える。どうして「様」なんだろう・・

 歌手の三波春男さんが「お客様は神様です」と、自分の歌を聴きに来てくれたお客さんに笑顔でお礼を言う姿を私は強烈に記憶しているが、医療従事者、特に医者が「患者様」と呼ぶ時、「患者様は・¥¥¥・神様です」と言っているような錯覚に陥るのは、私だけだろうか?

 冒頭から過激な意見を書かせてもらったが、読売新聞の日本語の現場という連載記事のなかで、昨今の病院での「患者様」呼びについての是非が取り上げられていた。

 医療はサービス業の一環、接客の手段の一つとして患者様と呼ぶのは当然・・・という理由で、「様」付けは行政が音頭取りをしたらしい。厚労省の医療サービス向上委員会が「患者さんの名前を呼ぶとき、姓(名)に『様』を付ける」ことで、患者さんに対する言葉遣いや対応を改めようという指針を国立病院あてに出した。

 本来、名前の下に様をつけて呼ぶ・・・だけのことだったのにそれがいつの間にか「患者様」に変身した。民間病院もこれに従い「患者様」が爆発的に流行りだした。様で呼べばそれに続く言葉もぞんざいにできない。言葉遣いが丁寧になり、対応が親切になる・・・そこに「様」呼びの最大の効果はあるが、しかし・・本当に患者「様」・・はまともな呼び方なのか?

 姓だけでなく、「患者」にまで「様」をつける呼び方に、当の患者さん達も実はあまり良い印象を持っていないらしい。患者様呼びを当然だと考えたり、望ましいとする意見より、違和感を抱く意見の方がずっと多かったという、患者さんからのアンケート結果もある。

 「医療従事者と病気と闘う側の患者さんが対等であろうとするならば、『さん』付けで十分」、「呼び方だけ丁寧でも医療の質が同じならかえって不愉快」とか「客=お金を払ってくれる人とみられている」、「病院がもみ手しながら待ち構えているみたい。医は仁術であるべきなのに、算術を連想させるのは不愉快、銀行やデパートで耳にする「様」呼びとは違うはずなのに・・」これらの批判的な意見に、私は全く同感である。

 ある病院内の調査でも「さん」呼びの支持が7割近くで圧倒的に多く、「様」はほとんど支持されなかったという。様呼びは「様」に見合った扱いを受けず、逆に距離感が広がってしまう印象があるらしい。全く、サマにならない「様」呼びであると、読売新聞はくくっていた。

 3時間待ち3分診療。医者は高圧的で患者さんの話を聞かず、気持ちを察するやさしい医療にはほど遠い。患者さんを“お客様”に引き上げるため「様」呼びしたところで、本来の恭しい気持ちからなされた対応ではないため、大病院のお粗末な「医の倫理観」には、かえって不釣り合いなのであろう。患者様と呼びながら実際には患者さんの気持ちに全く応えない医療現場を批判する声も多い。

 「患者様」呼びは、丁寧な印象を与えるが、かえって距離感を置いて突き放すような感じすら与えてしまう、という医師の老木さんは、患者さんと呼ぶ勇気・・というホームページを公開している。

 医師、看護師などの医療従事者が、患者さんと良好な信頼関係を築いていれば、強いて『様』などと呼ばずとも『さん』で十分。むしろ、「さん」呼びの方がずっと良い関係を作れるような気がする。

 この患者「様」呼びに違和感を感じるのも、どうやら医療関係者と患者さんとでは、違和感ニュアンスが少し異なっているらしい。医療従事者は「様よびでは壁ができて、立場が対等でなくなる」と言う理由からであるが、患者さんが感じる違和感は、「様」に見合う扱いを受けていないという理由が圧倒的に多い。

 対等な立場を望んで「さん」呼びにこだわる医者と、医療不信から「さん呼びでよい・・様呼びは不愉快!」と嘆く患者さん。このギャップはおそらく埋めようのない致命的な溝かも知れない。当初厚労省が目的とした、医療態度を向上させるために指導した様呼びはどうやら未だに、本質をはずれたところで空回りしているらしい。

 読売新聞ではさらに「患者」と「様」は、そもそも相性の会わない単語同士であると指摘している。  「さま」はそもそも、身分の高い人に対し、「その人のいる方向」との意味合いで、高い敬意を込めて名前や職名に付ける用になったのが語源。「お父様」「お母様」「叔父様」「お嬢様」「ご主人様」「奥様」「お客様」といえば、確かに「さん」より格式張って敬う気持ちが表れる。しかし、何でもかんでも「様」付けはかえって、逆効果になりかねないと言う。

 「先生」「社長」などもともと敬称の役割を果たす職名に様をつけると、逆に相手をばかにしているようにも聞こえかねない。「先生様」「社長様」では、はやしたてられてネクタイはちまきにして踊レとでも言われているようだ。

 一般的な職業を様呼びすればなおさらおかしなことになる。「店員様」「事務員様」「運転手様」・・大げんかになるだろう・と読売新聞。

 好ましくない状態を連想させる言葉とも、実は「様」は相性は良くない。国語学者の故・金田一晴彦さんは、「『患者』という言葉自体がすでに悪い印象を与えているため、いくら『さま』をつけてもらってもうれしくない」と書いている。

 最高級の敬意を示す「さま」は、言い方を誤れば逆効果を招く。「患者様」もその代表例のひとつだろう。・・・読売新聞 連載「日本語の現場」より

 さて「患者」という単語につけるには、「様」よりさまになる「さん」であるが、その呼び方で医療従事者と患者さんの目の高さが同じになるというのであれば、医者も「さん」で呼ばれることに慣れなくてはいけない。○○「先生」と呼ばれ続けて、当たり前のように医者としての年月を過ごすと・・・患者さんから○○さんと呼ばれたら、大方の医者はむっとするだろう、俺は医者だ!先生と呼べ・・って・・でも世の中では、○○先生は○○さんに違いないのであるが、どうも医者は○○さんと呼ばれることを嬉しく思わないらしい。

 駅の構内で定期券を落としたら、名前の書いてあるとおり○○さんで呼ばれる。決してそこで「先生」で呼ばれることはない。飲食店で数人の医者の集団がお互いを呼び合うとき「どうです○○先生・・いや××先生、それがね・・へえそうなンですか△△先生・・・」と、「先生」が運動会の応援合戦のごとく飛び交っていると・・きっとふつ〜〜の一般の人がそれを見たら「なんじゃこの集団は?」と、全くふつ〜〜には見えないのであるが・・でも当の先生方は自分たちがふつ〜〜でないことには全く気づいていない・それぐらいふつ〜でない感覚が「先生」達の肌身には染みついちゃっているのである。

 だから、世の中では「さん」が最も当たり前な呼び方なのに、病院のなかで診察室ならば、「さん」でなくて「先生」でなくては気が済まないという理屈も変だろう。

 世のお医者さん達へ・・患者さんを患者様と呼ぶことは辞めませんか? その代わり、ご自分もさんずけで呼んでもらったらいかがでしょう。それでようやく目も高さが患者さんと一緒になれますよ。みなさんのご意見、ぜひお聞かせ下さい。

 しかし、日本人は「様」をつけるのがきっと大好きに違いない。ベッカム様に、ヨン様(なんで、ペヨンジュンさんのこと、ぺ様って言わないんだろうか、「様」じゃなくって「さん」だったら・・ぺさん・・か?・・この呼び名の響きじゃ、世の奥様族は許さないだろうなあ。ベッカムさんじゃあ、そこらのただのおじさんになっちゃう?)。だけど、こうして使うヨン様と患者様の「様」は、どこがどう違うんだろう。神様の「様」と一緒だろ・・どう聞いたって・・・やっぱし患者様は神様です・・・って私の頭のなかには三波春男さんが出てきてしまう。こんな話題と患者様論議を一緒くたにしたら不謹慎だと、おしかりを受けそうであるが、すみません、くだらない話題で・・お粗末さまでした・・・(この「さま」はどういう意味ぢゃ??)


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