医語よろしく
2004年1月〜6月
2004.5.18
 腫瘍マーカーについて・・・
がんに関連する代表的な血液検査である腫瘍マーカーについて・・・実はこのマーカーの検査は臨床的な使用法は、必ずしも正しい使われ方をしていない事も多い。

腫瘍マーカーは、全身に散布されたがん細胞の数(ボリウム)を反映する検査値に他ならないため、本来腫瘍量の少ない初回原発例、再発が明確になるまでの経過観察の時期には、腫瘍マーカーが異常値を示すことは希であり、本来ならばその正常値を根拠にがんの広がりや存在を否定することはできないはずである。しかし実際の臨床の現場では、「大丈夫、再発はなさそうだ」とか「転移は心配ないよ」などの言葉で、正常値内にある腫瘍マーカーの値を都合よく利用している。

厳密には決してそのような利用の仕方をするのは正しくないが、それを聞いた患者さんがとりあえず一安心できるのであればと、医師は間違った使い方であることを承知の上(?承知でない御仁もいるかも知れないが)、実に巧妙にうま〜〜く使うのである。

しかし、現実的に最も腫瘍マーカーが検査としての存在価値を発揮するのは、なんといっても進行再発乳がんの治療経過中である。CR、PR(完全消失、部分消失)を正確に判定するには1ヶ月単位の画像診断が原則的に必要であるが、実際には毎月画像診断を行うことは現実的に不可能であり、その他の臨床所見(痛みなど自覚症状も含めて)だけで治療効果を判断することも多い。

その際、仮に腫瘍マーカーが異常値を示していたとしたら、まさに、マーカーの値の上下の変動は腫瘍細胞数の変動そのものを意味するので、マーカーの値だけで、治療効果を判断する根拠になる。

もちろん血液検査としての誤差範囲で変動することもあるが、実は正常値を超えた腫瘍マーカーの動きは、実際の病状の変化を確実に反映していることがほとんどであり、まさに進行再発乳がんの治療効果の判定根拠として、最も意義のある検査値であるといえよう。

言い換えれば、腫瘍マーカーは「腫瘍塊が存在し、かつ異常値を示している」時にのみ、検査としての意味があると言える。

なお、乳がんの腫瘍マーカーとしては数種類の腫瘍マーカーが知られており、その組み合わせ方は各施設によってまちまちである。しかし、現実的にはBCA225はCA15−3と同じような数値の動きを示すため、その両者を組み合わせることはあまり意味がないし、また感度が良過ぎて誤陽性(がんと関係なく異常値を示してしまう状況)が多いST439は必ずしも実用的とは言い難い。

ASCO(米国臨床腫瘍学会)でも乳がん腫瘍マーカーのガイドラインとして2000年時点から推奨されているのは、CA15−3とCEAの2種類であり、たしかに乳がん特異性や再発乳がんでの陽性率などからこの2種類の組み合わせが最も実用的と思われる。

一方、我が国の保険診療のなかでは、悪性腫瘍特異物質治療管理料として、月に一回限り腫瘍マーカーの測定が認められているが、その項目は2項目までの点数算定であり、何種類のマーカーを採血してもその算定点数は2項目を超えれば一律である。(もう少し簡単に言い換えれば、つきに1度だけ、2種類までの腫瘍マーカーの測定は保険診療内でできるが、それを超えて、何種類ものマーカーを見たり、ひと月のうちに何度も検査をすることは保険で認められていない・・ということである)

臨床情報としては、すこしでも多くの腫瘍マーカーの測定が望ましいように思われるかも知れないが、実際にはCA15−3とCEAの2種類の測定だけで必要十分、つまりそれ以外の腫瘍マーカーを追加して測定することはあまり意味はないし、むしろ無駄である。

・・・患者さんと医療関係者の皆さまへ・・
乳がん診療の経過中、腫瘍マーカーをひと月のうちに2種類以上測定することは全く意味がありません。保険で認められたその回数を超える検査は、検査費用は病院負担になるか・・最悪の場合自由診療としての患者さんの負担です。(通常このようなケースでの保険診療・自由診療の混合は認められていないが・・しかし抜け穴的にうま〜〜〜く金儲けしちゃう奴が、居るんだよ・・世の中には・・)


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