医語よろしく
2004年1月〜6月
2004.4.21
 大学医局の存在意義
この春、僕が最も信頼している大学の後輩の先生が医局を退局しました。つまり、大学病院の人事からはずれて、臨床医としての自由な活動の場を得ることを望んだわけです。もちろん彼なりにとても悩んだ結果、このまま大学医局のスタッフとしての道でなく医局の人事の影響を受けない病院選びをしたことになります。

彼は乳腺のスタッフで、患者さんからの評判もよく、手術もうまく、勉強もよくするし、学会の発表も優秀にこなし、どちらの病院でも乳腺のスタッフとしては引く手あまたの若手乳がん医者ですが・・・学位なんていらない!って、さくっと大学を辞めて自分の好きな病院に就職してしまいました。

乳がんの診療がしたくなくなったわけではなく、もちろん今でも一番興味がある診療内容でしょうが、彼曰く、大学病院にいても乳がんの診療を思うようにやれない。だから別に大学にいても乳がん医者としての腕を磨くことができないのなら、雑用ばかりの医局員の一人として、居たくもない医局にぶら下がって無駄な時間を過ごしたくない・・というのです。

ちょっと彼の言葉・・・一緒に考えてみませんか・・とても大事なことを教えてくれているんですよ・・・

先月も書きましたが、大学の医局はなんと言っても関連病院の人事権のすべてを掌握する、医師派遣団体の最たる機関です。関連病院の院長部長クラスは、大学から医師を派遣してもらえなければ、自分の所の医師の枠をまかなえないので、医局には(もっとはっきり言えば教授には・・が正しい)絶対服従の状態であり、そうやって医局と関連病院の上下関係が成り立っていたわけです。

ところが、これまでは医学部を卒業したら、ほとんどの新人医師がどこかの大学の医局に入局し、医局員として下っ端としてこき使われつつ研修(医師としての実地トレーニング)を行なっていたのが・・・・今年の春から新しい医師初期研修のシステムが導入されたことより、大学医局に入局しなくてもしかるべきどこの病院でも医師としての研修を行える、しかもそれなりの給料もしっかりいただきながら医者としての実地トレーニングもできる・・・となったら、わざわざ下っ端の仕事しかさせてもらえない大学医局になんか、医学部卒業生は入局しなくなりますわね。

じゃあ・・・大学の医局・・大学のスタッフで残るってどんな意味があるんだろうか・・・とっても勉強が好き、研究が好きで好きでたまらない・将来教授としててっぺん人になりたい・・大義名分はそういう人間しか大学には残らなくなる?でも、実のところ、そんなに向学心に燃え医学を極めよう、なんて神様みたいな奴はほんの一握りも居なくて、(大学スタッフが全員医学を極めようという役職にあるとは、当の医局員はさらさら思っちゃいないが・・)今は、医局にしがみついているのは、ほとんどが「学位」欲しさに、イヤイヤいる連中でしょう。

つまり「医学博士号」が欲しくて、居たくもない医局に忠誠を誓った振りをしている。ほんとは学位さえもらっちまえば、大学や研究なんかには全く興味はなく、とっとと辞めちまっていい病院に就職したいのに・・教授のお眼鏡にかなって運良く学位をもらえたら、世話になった手前上、あまりにむげにぷいっと辞めちゃうのもなんだし、お義理だてしてそのまましばらくは大学に残らざるをえない・・別に勉強や研究、論文を書くことがとりわけ好きって訳ぢヤないのにまだ今年も外の病院に就職させてくれねえ・・なんて文句言いつつ大学の安月給で医局を支える。・・・つまんなそ〜〜〜。そんな心の狭いことで、優しさとか思いやりとか、患者さんにパワーをあげられる医者としての本分が全う出来るんだろうか?

その「学位:医学博士号」も・・昔と違ってそんなに「重たい」肩書きじゃなくなってきて、医者の集団に向かって石を投げれば医学博士にあたる・・ってなモンで、かくいう私も一応博士ですが、そんな肩書きは名刺に刷り込むのでさえこっぱずかしいだけのどってことない「博士」なんです。まあ、大病院の部長とか院長とかになるときには学位が必須なんて事をよく聞きますが、そのうち医学博士の重さが軽くなることを考えると、ますますそんな肩書きはどうでもよくなる、つまり、学位を取るための医局の存在価値がだんだん薄れてくる・・って事ですよ。

では、いったい医師の一生において、大学の医局に在籍することは今後はどんな意味合いを持つのでしょうか??・・・きっとこれから必要なことは「専門医」の肩書きでしょうね。つまりお医者さんとしての「価値」は、そのお医者さんが何で専門にメシを食っているのか、に関わってくるんでしょう。これまた、乳がん学会専門医の肩書きが、病院の表看板に掲載出来ないように、医師会や医学会との連携も考え直さなくてはならないけれど、その肩書きこそが、患者さんが必要な「医療情報」そのものだと思いませんか?仮に医学博士って看板に書いてある医院より、何とか学会専門認定とか、何とか中央委員会認定医とかの表記の方が、患者さんには安心じゃないですか?

専門医や、認定医を作るところが大学病院。という構図にだんだんなっていくんじゃないでしょうかねえ・・何度も言いますが、本当に勉強が好きで、研究が大好きで、論文を書いたり学会発表をしたりすることが医者の本分と思っておいでの先生が、医局のスタッフで居ることに、私は何ら異議を唱えませんので誤解のなきように・・・

後輩の○○君、学位なんぞいらない、そんなことを目的に居たくもない大学医局に籍を置くことに 「NO」を突きつけた、君の根性に敬意を表します。君の気持ちはとっくに「専門医」だよ。今後は、多くの患者さんに心から慕われる、優秀な臨床医としての腕を、新しく就職した病院でどしどし磨いてくれることを望みます。また一緒に、手術や外来、やろうや・・・


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