医語よろしく
2004年1月〜6月
2004.2.20
 国際会議で鎖国感?・・・
2月の初め、チェコで乳がん関連の国際会議があり、プラハに行って来ました。その「渡チェコ記」はまた別に・・さて、その会議は世界各国より乳がん関連ドクターが全部で3〜400人、一番多いのは陸続きのドイツからのドクター50〜60人。もちろん会議は英語で進められますが、いざ会議室を出ると、フロアではドイツ語やらラテン語やらがイッパイ聞こえてきて(実は、英語じゃないことしか分かりませんが)たっぷりインターナショナルな雰囲気を味わいました。

会議はハーセプチンやゼローダなど日本でもおなじみ(といいつつようやく数年の歴史)の薬を徹底的に勉強させられたのですが、勉強の目玉は最近学会や研究会などドクターが集まる会合でよく行われる「ケーススタデイ:症例検討」・・ってやつです。どんなものかというと、台上のプレゼンテータの先生から乳がんの症例呈示があるんです。年齢何歳の乳がん患者さん、温存手術のあと病理検査でリンパ節転移とホルモンレセプターを確認、補助療法としてこのケースではどんな薬を使いますか?とか、何年後に肺に影がでて肺転移が分かり、じゃあ次にどんな治療方針を立てますか?この薬で治療したけど6ヶ月くらい効いてた後にまた再発巣が大きくなってきた、さてその次は何の薬を使うか?と、次から次へと治療に関する質問を投げかけてくるのです。

会場では各参加者にアンサーパッドが配られ、会場の参加ドクターは画面に提示された箇条書きの回答のなかから、自分が考える薬剤や治療法の番号を押して、直ちに会場内の数百人のドクターの回答を集計したものが表示される・・という方法です。その回答状況を見ると、イヤ、俺はこのケースでは3番の薬って答えたけど、それを選んだ先生は20%しかいなくて、別の4番の薬って答えた先生が70%もいるんだ・・ヘエ〜〜てなモンで、結構、勉強にもなるし力試しにもなるわけです。

そんなケーススタデイをやっていると、そのうち隣に座っている仲間の日本の先生と顔を見合わせてしまう場面がたびたびあったんです。それは、台上のプレゼンテータの先生が、選択肢の中に、日本で使われていない(けれども世界中のほとんどの国で処方されている薬)の名前を当然のように、出してきたときです。他の国の先生達はご自分が治療に使っている薬ですから、平気で答えの番号を押せますが、僕ら日本の先生達は・・ノーコメント、お手上げ状態で、お互い顔を見合わせてため息をつくしかありません。

さらに、その会議のなかでは、現在、世界的に行われている大きな臨床試験の進捗状況の報告がありました。そこでは、その国際的な臨床試験に参加している国々の名前が読み上げられたのですが、常連組の米国、ヨーロッパの多くの国に加えて、おとなり韓国やシンガポールなどのアジアの国々も多数参加していて、しかし日本の名前はついぞ読み上げられない・・つまりその国際的臨床試験には日本は参加できていない・・・ワケです。なぜか??もちろん先のケーススタデイの時のように、日本で使われていない薬(つまり日本で保険適応のない薬)がその臨床試験のなかで使用されていたり、また日本でも使われてはいても、その臨床試験で指示される容量が、日本の保険で認められている最大容量をオーバーしているからなんです。

な〜〜んじゃそれ・・てと思う方もきっとたくさんいるでしょう。アメリカの患者さんと日本の患者さんがそんなに使える薬の容量が違うかな??体表面積って言う、体重と身長で補正した調整法の考え方があるんだから、つまり、体重も背丈も大きい人にはこれだけの補正値を、背が低かったり体重が少なかったりしたらそれに応じて補正した量を、世界の他の国と同じように、つかえばいいのに・・・。わざわざそれが、日本人特有の何チャらかんチャラで最大耐用容量が欧米人と違うから云々と・・だから日本ではここまでしか使えない・・・そんなことぐちゃぐちゃやってるから、世界の仲間に入れてもらえないんだろう。

外国で使える抗がん薬が日本では保険適応がない、だから使いたくても使えないっていう話は、他でも聞いたことがあるでしょう。韓国なんかは米国のFDA(食品薬品衛生局:日本の得厚生労働省のもの)の承認にあわせて同時に同じ容量で使えるように認可している・・らしいです。

ここでも、日本の悲しい乳がん医療の暗〜〜い歴史を引きずっているんだろうか?日本は日本独自の・・・なんて考えているつまんねえプライドが、いつまで経ったって抜けないから、患者さんにとっては治療チャンスをずいぶん失っていることに早く気づいて欲しいよな。鎖国はもうたくさん。黒船はとうに訪れ、坂本竜馬もいるし?薩長土佐の元気な役者もたくさんそろった。しかし乳がん医療の文明開化(乳がんだけでなくてがん全般かも・・)はまだまだ遠い・・・・・遠いプラハの街から閉ざされた我が国の乳がん医療を憂うジャパニーズ乳がん医者より・・

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