医語よろしく
2003年5月〜8月
2003.8.18
 代替療法の講演会その後・・・
EBM(エビデンスベーストメデイスン)はがん治療の単なる武器のひとつであって治療のすべてではない。有効率30%の抗がん剤治療でも、患者さんに200%の生きる希望をあげられるのが専門医ってもんでしょう。 治療法の数字だけならべて「どっちにするか決めて下さい」と患者さんに尋ねることが、「EBMに基づくインフォームドコンセント」なんて思ってる医者なんざ、タダの「海老デンす」・・・

がんの代替療法をテーマにした千葉乳腺疾患研究会での講演会に関する先月の記事は、各方面の方々よりいろいろなご意見をいただきましたので、今回もう一度そのテーマでお話ししましょう。

ある患者さんからは、単純にテーマが面白かったので、会場に参加できて勉強になったとのお答えでした。 しかし数人の患者さんは、やはり特別講演が期待はずれであったことを指摘していました。(僕の記事ほど辛辣な評価はしませんでしたが、それはさすがに特別講演のドクターに失礼と思ったのでしょう。でも医者でない一般の、たとえば名前が売れている有名人があのような講演をしたら、おそらく思いっきり残念だつまらなかったと評価したでしょう)

会の流れに対する批判、つまり僕がいちばん不愉快に思ったこと、「患者さんが治療根拠のない代替療法に走るのはよろしくないことがよくわかったでしょう。自分たちのやっている根拠のない代替医療が罪悪であることに早く気づき、目を覚ませ!!」的な、一方的な医療者からの発言で会が終わってしまったことに対する批判的なご意見は、ごく一部の医療関係者から聞かれたにすぎませんでした。(でも僕としては、同じく腹を立てている医療関係者が少なからずいてくれたことを嬉しく思いました。自分一人だけ怒っていたら、多くの何も感じない人から見れば、何おこってんのこの人変な奴・・的扱いをされかねないので・・)

あの研究会の代表幹事の先生とやはりそんな話をしているうちに、しかしあの研究会の「代表」は俺だし、お前(=僕のこと)は「顧問」だし、あの特別講演の先生を呼んだことも、あの内容でしゃべってもらうことも、研究会全体がそのような流れで終わってしまったことも、すべて、最終的にはすべて俺たち自身の責任になるんだぞ・・と言われ、絶句してしまいました。

ほんとうにいろいろ考えさせられる研究会でしたよ。

千葉大学の後輩の先生からもらったメールの内容をお伝えしましょう。

「今回のホームページの内容は凄かったですね。宮内先生の残念な気持ち(怒り?)がよく伝わってきました。エビデンス、エビデンスと言いながら、エビデンスのない事には結局自信を持って何もできない今の医療に疑問を感じています。エビデンスはそれを基にして何を考えるかが重要であって、エビデンスそのものがすべてでは無いと思います。エビデンスがないから何もしないのか、エビデンスがないけど何かをするのか、これは大きな違いだと思います。医師の考えにも個人差があり、それがある意味認められるなら、患者の考えにも個人差があって、それを尊重しながら自分の持つ知識・経験・技術を発揮し、最終的には両者が納得できる道を辿るのが最善だと思います。理想論かもしれませんが・・・信頼関係こそが最も大事なのではないでしょうか。」

この先生は、実は僕と一緒にがんセンターで仕事をした同僚の先生です。僕ががんセンターを退職した翌年には、千葉大学に戻り、今は大学で乳がんの患者さん達を見てくれている優秀な先生です。がんセンター時代には新しい(見張りリンパ節)手術のことや、難しいけれどもとても大切になった抗がん剤やホルモン剤の治療法のことや、新しい医学知識としての海外の論文の勉強をしたり、夜遅くまで外来を一緒にやったり、そんな忙しい毎日を送るばかりで、「今の乳がん医療のひずみや問題点、自分たちがどうすべきか・・とか、どうあるべきか・・」なんて話は、ついぞ彼とする暇はなかったのですが、こうして「乳がん医者」としていちばん大切な「こころ」を、いつの間にか勉強していってくれたことに、僕はとても喜びを感じます。

患者さんにとっていちばんの代替療法は「医者の心」である

という言葉で・・このテーマの記事の締めくくりとしましょう。

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