医語よろしく
2003年5月〜8月
2003.5.15
 心の痛みわかる医療を・・・
2003年4月17日 (木) 朝日新聞より・・

医者が重い病気にかかり、患者の立場になって始めて気づくことがあります。無神経な言葉で患者を傷つけるドクターハラスメント(ドクハラ)を、くらし面で取り上げてきました。今回は、体験を生かして患者を支援したり、医療現場を変えようとしたりする医療者を紹介。

耳傾け患者を支える

 乳がんの治療で有名な千葉市の川上診療所。乳がんを患う小倉恒子さん(50)は、ここの患者であり診察を受け持つ医者でもある。
 専門は耳鼻咽喉科。普段は週6日、公立病院などで働き、診療所での診察は月2日。風邪や耳鼻科の患者のほか、乳がん患者からの相談が多い。「抗がん剤の副作用が怖くて治療をためらってしまう」「再発を告げられ、どうしていいか分からない」

 診察室で、がん患者たちが悩みや苦しみを吐き出す。小倉さんは、その人の生活環境や人生への希望、治療への思いなどをじっくり聴く。自らの経験と医療の知識を交えてアドバイスをする。

 小倉さんは34歳で乳がんと診断され、左乳房を全摘し、副作用の強い抗がん剤の治療を受けた。乳房を失った悲しみ、腕が上がらない後遺症のつらさ、再発と死への恐怖・・・・。医者の立場では分からなかった数々の苦悩を体験した。
 病棟で優しい言葉をかけたり、脇に座って話を聞いたりする大切さを知った。乱暴だった自分の物言いを反省し、患者さんの痛みが分かる医者になろうと誓った。

 退院後、孤独感に浸っていたとき、乳がん患者の会と出会い、仕事に復帰。子育てにも追われた。だが、5年後に離婚。13年後の2000年には、胸骨などに再発、現在も抗がん治療を受けながら、がんとの「共存」を続けている。一方で、川上義弘院長(49)から乳がん診断のトレーニングを受けている。
 「死への恐怖を引きずる患者に、『大丈夫。一緒に頑張ろう』という小倉さんの言葉がどれだけ支えになるか。彼女は患者体験と医療の知識を兼ね備えていて、専門医にはない力を持っている」と川上院長は話す。
 小倉さんは「医者と患者をつなぐ架け橋になりたいと思う」と話す。時には相談に来た患者さんに強い言葉をぶつけ、背中を押すこともある。「患者は強く生きなきゃ」

現場の意識を改める

 「もし、がんを体験しなかったら、つまらん感性の持ち主になっていたでしょうね」。がん免疫療法専門「内藤メディカルクリニック」(名古屋市)院長の内藤康弘さん(63)はしみじみ話す。

 内藤さんは47歳のとき「大腸がんで余命3ヶ月」との診断を受けた。ただちに大学病院で手術。
 病室で夜一人になると言いようのない寂しさに襲われた。せめて長女の結婚式までは生きたい。「寿命」であるはずの3ヵ月後に退院。その後16年間、末期がんの専門医として走り続ける。

 入院中、「患者」として感じたことがいくつかあった。看護師が少しでも厳しい顔つきをすると、「何か悪い結果が出たのか」と不安になる。回診で医者から見下ろされると威圧感がある。何より強く感じたのは「肉体の苦痛は3割で、精神的な苦痛が7割」ということだった。

 「この経験を医療現場に伝え、生かそう」。退院後に住友記念病院(名古屋市)の理事長となった内藤さんは末期がん患者を受け入れ始め、看護師たちにこう伝えた。
 「病院では患者に笑顔で接してください。末期がんの患者さんは体より心の痛みが強い。話を十分に聴いてほしい」
 抵抗する看護師もいた。末期がん患者に対応するエネルギーは相当なものだったからだ。
 内藤さんは自ら手本を示した。回診の際ベッドサイドにひざまずき、必要なら1時間以上話を聴いた。看護師たちが変わり、勤務時間後も患者の背中をさすったり、手作りパンで励ましたりするようになった。「自分の気持ちが通じたと思うと本当にうれしかった」
 昨年11月、内藤さんは病院を退職しクリニックを開いた。今も末期がん患者が全国から集まる。

看護師らシンポで発表

医療者が患者やその家族の立場になったとき―。そんなテーマで民間団体「HCRM研究会」が3月下旬、東京都内でシンポジウムを開いた。小倉恒子さんをはじめ医者や看護師ら5人が体験と取り組みを発表した。
 34歳から3つのがんにかかった看護師の土橋律子さん(48)は、患者を精神的にサポートしていく必要を感じ、患者会「支えあう会a(アルファ)」を作った。「患者が不安を持ちながらも地域や社会で生きてゆくための、支援の場が欲しかった」と語った。

研修で患者役の体験も

中学生の娘が卵巣の悪性腫瘍になった経験を持つ公立藤岡総合病院(群馬県藤岡市)の池田優子看護部長(55)は、研修で看護師に患者の立場を模擬体験させている。患者との実際の会話記録をもとに、医療者とのやり取りを再現し、どう感じるか。「医療者と患者のズレを認識してほしい」と話した。

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