医語よろしく
2003年1月〜4月
2003.3.15
 医局講座制・考・・・・・
まず川上診療所の通信欄から・・ 
私(川上院長)が最も信頼し期待している乳がん専門医がいます。随分と前のことですが、大学で乳がんの研究を始めていたころ、彼は新人としてやってきました。まだ検査も手術も、古い体質の時代でしたが、乳がん医療の新しい息吹を感じさせる若者で、私も一緒に仕事をするのが楽しかったです。以来15年、彼は千葉大学の乳がん研究のリーダーとなり、多くの人材を育ててきました。「こんな自分でも、少しは人のために役立つことがしたい」と言います。その彼がこの春に大学を離れます。教育者として研究者としてりっぱな仕事を成し、いよいよ臨床の最前線に出るわけです。医者と患者の関係は、「何かをしてやる」「何かをされた」というような対立的な関係ではなくて、目の前にある病気に対して「いっしょに考えていこうよ」という姿勢を貫いている数少ない大学人です。どんな大病院だって所詮は人がやっていること、どうぞ皆さん、彼のようないい医者とめぐり会って下さいね。

院長はことなげに、ある優秀な若い乳がん専門医が大学から離れる事実を伝えてくれました。それ以上のニュアンスは決して伝わらないように、とても配慮して書かれた文章です。しかし現実にはこの人事は悪しき日本の古いシステム「医局講座制」によってなされた、望まれない人事ではないかと僕は思っています。
医局制度に縛られた医師達が、自由な意見の発言もなく、医局の長の言うがままに自分の人生を決めざるを得ない。ほんとうに正しい医療環境を提供できるシステムなんだろうか、医局講座制というのは・・・いつも疑問が残ります。もう一つ新聞記事をピックアップしましょう。

2003年2月14日(金) 読売新聞の記事です。内容は医局廃止・・・診療、人事の「閉鎖性」にメス・・

 弘前大医学部が、日本の医療閉鎖性を象徴する医局制度の年度内廃止を決め、関係者の注目を集めている。

 研究偏重や、診療の縦割りなど、医学部・大学病院が抱える問題点の多くは、医局制度という日本独特の仕組みと密接な関連がある。
 医局とは、医学部(医科大学)の臨床系講座ごとに、教授をトップに、助教授、講師、助手、大学院生らが序列を作る組織。教授は通常、大学病院の診療科長も兼ねる。同窓会同様の任意団体に過ぎないのだが、診療、教育、研究という医学部・大学病院の役割すべての基本単位となっているのが実情だ。
 医局員は交代で「関連病院」と呼ばれる病院に派遣される。都市部の大病院を除き、「関連病院」の網目は、国内津々浦々に行き渡っている。人事権を握るのは教授だ。

 医局の医師にとっては、医局と関連病院を行き来する間に“出世”の道が開かれ、地域の病院側も人員確保が補償される。ただし、教授の意向に従っていればの話だ。

 医局制度は人事、診療の両面で、閉鎖性の象徴だ。この傾向は、医師数の多い都市部では薄らぎつつあるが、地方では今なお顕著とされる。

 弘前大医学部では、医師派遣先の民間病院から医局に寄付金が渡っていたことが明らかになったのを受けて、改革に踏み切った。その内容は、
@「医局」を廃止し、準公的な組織「講座・部門運営会
 議」にする 
A地域の病院からの医師派遣要請の対応窓口を医学部長
 に一本化する
B医師派遣状況を第三者機関がチェックする

―などで、年度内に実現するという。
 しかし、派遣する医師の有無は、旧医局の「運営会議」に問い合わせることになっており、医学部長も「過渡期には、旧医局や教授の力が残るだろう」と認める。

 弘大が地域の病院の人事権を握る構図が変わる訳でもない。弘大の関連病院は、青森県内を中心に八十七病院あり、派遣している医師は八百人を超える。医学部長は「いきなり、医師派遣から手を引けば地域医療が崩壊してしまう」と話す。一大学だけの改革には、やはり限界があるのは仕方がないだろう。

 「医学博士号がないと大病院の重要ポストにつけない慣行が、教授の権限を強め、医師を医局に帰属させている」と指摘する声もある。「出身大学に残る医師の割合を限定し、強制的に交流させ新風を入れなければ医局は変わらない。教育・診療部門と、研究部門を分離するなど、医学部の根本的改革も必要」という意見もある。  2004年度から必修化される医師臨床研修制度では、これまでの医局中心に行われてきた医師の研修を改めることになっている。研修を終えた医師が、自由に就職先を選び、病院側は優秀な医師を選んで採用し、医療の質を競い合う―。こんな当たり前のことを実現するため、医学部・大学病院の関係者は弘大の改革を重大な「問題提起」と受け止め議論を始めるべきだ。
ある先生にこの記事を読んでもらって感想を頂きました。
30年前の学生運動は「医学部医局解体闘争」から始まった。その時、教授会は各医局の「人事権」を教授から医局に移すという措置をとった。しばらくは、関連病院への医局員派遣は、民主的に医局員の総意で行われていたらしい。しかし医者は所詮、烏合の衆の集まりだから、「自らの自治」なんかできやせず、さっさと「獲得した権利」を教授にお返しした。その先頭に立ったのは、自分の研究業績がほしいお勉強家たち。医療の何たるかが分かってない奴らが、医局講座制を再構築して、世間と隔絶した世界に閉じこもって、「今も」君臨しているのかもしれない。

 日本のひずんだ医療構造の根っこには、こんな重大な問題点があるということを・・皆が共通に理解しているのかなあ。

イベント情報
医語よろしく
HOTひといき
セカンドオピニオンのすすめ
講演録・出版記事
関連情報サイト
がん患者SS(青山) TODAY !
オンコロジストの独り言
五行歌掲示板
ピンクリボンは乳がん撲滅
運動のシンボルマークです
ブレストサービス社は
ピンクリボン運動を応援します
乳がん検診を受けましょう!
Yahoo! JAPAN
   インターネットを検索
   ブレストサービス  
        ホームページを検索
お問い合わせ リンク規定 プライバシ−ポリシ− サイトマップ