医語よろしく
2002年7月〜9月
2002.9.13
 ”がん医療情報の環境整備を”
月刊「がん」もっといい日
巻頭言「提言」
”がん医療情報の環境整備を”
ブレストサービス代表 宮内 充

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宮内充 医学博士 
    乳がん医療情報コンサルタント「ブレストサービス」代表
    千葉県がんセンター乳腺外科元科長

が・ん・医・療・情・報・の・環・境・整・備・を・
提供する側に求められるバランス感覚
受け手側に必要な、
的確な判断と賢い選択をするための知識

 多くのメディアが報道する各種のがんに関する医療情報は、果たしてすべての患者さんや一般の方に、正確かつ確実に伝わり、ひいては受け手側のプラスになり得ているのだろうか、疑問に思うことも多い。 マスコミなどが一般大衆に向ける情報伝達の正確性は、常にその「話題性(公共性)」と「個人特化性」との狭間で揺れている。限られた対象に向けた情報は、メディアにとっては話題性に欠けるが、当の対象であるわずかな人々にとっては値千金の情報だ。にもかかわらず、公共性、話題性という優先命題の前には、報道に値しないと切り捨てられる。たとえわずかでも受け手側にとっては価値ある情報のはずが、メディアにとっては報道に値しないというのも理不尽である。また、極めて大きい集団(母集団)を対象に発信する情報は,話題性は抜群であっても、実はそれが真に有益であると考えるのはひと握りの人にすぎず、あとの大多数の人にとってはむしろ有害で不必要なこともある。話題性だけが先行した大風呂敷は要らぬ不安をあおる道具でしかない。

 医療情報の多くは、医療の素人である一般の人や患者さんをターゲットに発信されていることを考えると、少なくとも妙なあおり立てや誤ったニュアンスで伝わる危険性のある情報発信は決してすべきではないし、かつ受け手側もその情報の持つ側面や本質を的確に判断するだけの知識が必要である。 特にがんの新薬(単に日本で使われていないから「新薬」とされるが欧米では当たり前に使われているevidenceの高い「普通薬」が大部分)の使用許認可、承認にまつわる情報はあまりに不十分、不透明、不正確で、過剰なあおり立ての感が強い。申請から承認までのスピードが、薬によってまちまちである理由も今ひとつ明快ではないが、特定の製薬企業の不当な利益にならぬように、また誤った情報で世間を混乱させぬようにとの行政側の配慮からか、新薬承認直前には情報量が極端に減る。厚生労働省の許認可プロセスのほんの通過点にすぎない某審査部会の承認を報じるメディアの報道は、あたかも新薬が日常臨床で直ちに使用可能になったかのような印象を受け手に与えることにつながる。新薬は厚労省承認後も約60日間は保険適用にならず保険診療としては使用できないが、その間も緊急な場合に限り、患者さんの自己負担による特定療養費制(混合診療を認め、保険診療と自由診療との併用が可能)の下での使用が可能である・・ことなど知っている一般人はそうはいない。正式な保険診療許可の前に、すべての治療を自己負担に頼ってでも新薬を使おうとする医師も患者さんもいる。前述の特例が一部の人にしか利用できないようでは公平な医療とは言えないし、知っている者だけを利する情報は、何とも偏った情報としか言いようがあるまい。 治験(薬が世に出てくる前の臨床的確認試験)をより迅速に行えるよう、厚労省が支援するシステムを構築中と聞く。これまでは許認可を申請する側の製薬企業が金を出し医師が試験を請け負っていたが、必要ではあっても採算性のない薬はその対象になり得なかった。さらにこれら治験を請け負う医療機関ネットワークをつくり、企業ベースの治験も医師主導型で厚労省が支援する。新薬承認が今より迅速になると期待されるが、それと同時に、必要な対象に向けて十分な新薬承認情報が常に開示されるような、公明性の高い情報環境が整備されることを望んでいる。

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