ある乳がん患者の話・夫の愛・・・
2002年10月20日 読売新聞朝刊のコラムを読んで、四十二歳の主婦の方、乳房全摘手術を受けられ、その三年後にもう片方にも、転移して全摘。両方の乳房を失って退院した日、ご主人と入浴、「わぁ、きれいに切ってもらってあるな」と言って、奥さんの体を洗ってあげたそうです。微笑ましさを感じたのですが。
一方ある四十三歳の主婦は、右乳房全摘。
退院の夜、ご主人と娘さんの前で「ママの胸こんなになっちゃった」と、胸を見せた時、「気持ちワルーッ!」とご主人の一言。この主婦、娘さんが結婚されたら、「必ず離婚します。」と・・・
この文を読んで、両極端ではありますが、私の夫は前者の方で良かったと、思いましたが。
これはさておいて、女性にとって、「子宮」「乳房」は、大事なものです。
それを切除しなくてはならない辛さ、悲しみ、一番の理解者であるべきはずの、ご主人から投げつけられた言葉に、他人の私でさえ腹立たしく思いました。このように子宮、乳房の摘出と言うのは、パートナーとのかかわりが、大変重要な要素だと思うのです。若ければなお更の事・・・
術後の患者の心のケアだけでなく、ご主人の心のケアと言うのか、心構えと言うのか、患者は家族の思いやりなくしては、一人では闘えないという事。もちろんこれはどんな病気にも、当てはまりますが、
術前後にアドバイスがあれば、少しは緩和されるのでしょうか?でも、分刻みに診察をこなす大病院では、無理な話ですね。ちょっと考えさせられる、心が痛い記事でした。
先生はどのように思われますか?
美伊奈栖
乳がんの治療(手術や抗がん剤治療)の後で、ご主人との関係がぎくしゃくしてしまう患者さんは時々おられるようです。これは夫婦の間柄と言うより人としての思いやりの問題のような気がする。
病院でどのような対応ができるかって?? 僕は極力、ご主人にもご本人と同じ病識をお持ちいただけるように心がけました。手術前、手術まで、ひょっとすると今ひとつご自分たちのこととして、ピンと来ていなさそうなご主人でも、手術で取ったもの、乳房の形そのものであったり、単なる白い肉のかたまりでしかないしこりであったり、見ていただくものはいろいろですが、
そのとき、ほとんどのご主人が「目の色」がかわられます。そこで初めて当のご本人である大事な奥様と同じスタンスで病気をとらえてもらえたかな・・と思うことがありました。外来にも、極力ついてきてもらいます。診察室で奥様と同じ話を聞いてもらいます。
僕ができるアドバイスはそんなものかな・・・後は夫婦の問題、デコボコしながらも上手にやってくださいって、祈るばかりです。
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